プール施設等で、塩素ガスが発生する事故が起きています。
原因は、機械室に設置されている循環式浄化設備に薬液を補充する際の手違いによるものです。
夏に向けてプールの清掃作業等を行う前に、事故防止対策を講じておきましょう!
プールの消毒に用いられる次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性であり、一方、水中のゴミなどの浮遊物を凝集し、濾過を助けるための凝集剤に用いられるポリ塩化アルミニウムは酸性のため、混合すると黄緑色の有毒な塩素ガスが発生します。
塩素ガスは、目、皮膚、気道を強く刺激しますが、低濃度でも鼻やのど、目に刺激を感じ、吸った場合は、肺水腫を起こすこともあります。特に低濃度の場合、上気道への刺激が弱いため、ガスが肺の奥まで侵入し、遅れて肺水腫を起こして中毒症状が現れることがあります。また、高濃度の場合は、窒息感などの呼吸器症状や中枢神経症状などを起こし、死に至る場合もあります。
1 | 38歳男性(設備業者)がプール施設の機械室で次亜塩素酸ナトリウムの抜き取りを実施し、ポリ塩化アルミニウムのタンクに誤って次亜塩素酸ナトリウムを混入させ、発生した塩素ガスを吸い込んだもの。(中等症1名、平成26年3月) |
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2 | 35歳男性(教諭)が、学校のプール施設の機械室で点検を行った際に、タンクに入っていたポリ塩化アルミニウムが減っていたため補充しようとしたところ、誤って次亜塩素酸ナトリウムを投入したために発生した塩素ガスを吸い込み受傷したもの。(軽症2名 平成24年8月) |
3 | 28歳男性(教諭)がプール施設の機械室で清掃作業を行っていた際に、誤って次亜塩素酸ナトリウムのタンクにプール用の凝集剤のポリ塩化アルミニウムを入れたため、塩素ガスが発生したもの。作業を行っていた教諭から、異臭が発生している旨の報告を受けた教諭4名が現場を確認するために機械室に入ったところ、塩素ガスを吸い込み受傷したもの。(軽症5名 平成22年7月) |
4 | 24歳男性(アルバイト社員)が、プール施設の機械室内での清掃作業中、次亜塩素酸ナトリウム約10リットルを誤って隣接されているポリ塩化アルミニウムのタンク内に補充してしまい、発生した塩素ガスを吸い込んだもの。(軽症1名 平成22年12月) |
平成19年から平成28年までの過去10年間に13件発生し、31名が救急搬送されています。そのうち、6件が学校のプールで発生しました(図1)。
図1 事故発生場所
事例1
事例2
このような場合には事故を未然に防ぐために対策をしましょう。
事故防止対策の例
明確に識別できる色(テープなど)で区別する。
保管場所、注入場所に色を合わせて表示する。
(1)薬剤等の取り扱いは十分な知識がある方、又は、取り扱いについて十分に説明を受けた方が行いましょう。また、努めて複数の人で作業を行いましょう。
(2)薬剤等は種類ごとに専用の保管場所で保管しましょう。
(3)万が一の事故発生時の対応について周知しておきましょう。
事故発生時には、他の部屋への避難、消防機関への通報、空調設備の停止など、各施設の対応マニュアルがあればそれに従い、判断に迷うときは、まず避難して、速やかに消防機関に通報しましょう。
(1)事故防止対策
「東京都プール等取締条例施行規則別表第二」
※同条例等は東京都内のうち、特別区、八王子市及び町田市を除いた地域に適用されます。特別区、八王子市及び町田市はそれぞれの区市の条例に基づきます。
(2)事故発生時の対応
「次亜塩素酸塩溶液と酸性溶液との混触による塩素中毒災害の防止について」
(平成16年11月2日付厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)