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救急搬送データからみる高齢者の事故

    

東京消防庁管内 1)では、令和元年中、日常生活における事故(交通事故を除く。)により、約14万5千人が救急搬送されています。救急搬送の半数以上は高齢者 2)で、平成27年から令和元年までの5年間に38万人以上の高齢者が、日常生活中の事故により救急車で医療機関へ搬送されています。
 日常生活での思わぬケガは生活に影響を及ぼすこともあり、本人だけでなく家族や地域で事故防止を考えることが重要です。

1) 東京都のうち、稲城市、島しょ地区を除く地域
2) 65歳以上

高齢者の事故防止ポイント

事故の実態や傾向を知り、本人、家族、地域でそれぞれができる事故防止対策を実施しましょう。
 加齢に伴い、様々な身体機能が変化します(心肺機能の低下、筋力の低下、視覚・聴覚機能の低下、嚥下機能の低下など)。身体機能の変化について知り、事前の事故防止対策をしましょう。

ころぶ事故を防ぐために(転倒防止)

  • 立ち上がるときは近くのものにしっかりとつかまりましょう。
  • 着替えるときには、無理して片足立ちせずに腰かけましょう。
  • 敷居につまずかないように、体力を増強して、つま先を上げてすり足を改善しましょう。
  • 乗り物に乗り降りする際は、足元の段差に気を付けましょう。
  • 自転車で段差を乗り越えるときは、急がずあわてず慎重に乗り越えましょう。
  • エスカレーターに乗るときは、しっかりと手すりをつかみましょう。

落ちる事故を防ぐために

  • 階段がある家庭では、階段には握りやすく滑りにくい手すりを設置しましょう
  • 滑り止めマットを敷くなど、事故防止対策をとりましょう。

おぼれる事故を防ぐために

  • 長湯、高温浴は避けましょう。
  • 飲酒後の入浴はやめましょう。
  • 入浴時には家族に知らせ、家族はこまめに声をかけましょう。

ものがつまる・誤って飲み込む※事故を防ぐために(窒息・誤飲防止)

  • 小さく切って、良く噛みましょう。
  • お茶など水分を取りながら食事しましょう。

※ 以下「ものがつまる等」という。

1 高齢者の日常生活事故発生状況

(1)高齢者の事故はどのくらい発生しているの?

平成27年からの5年間を見ると、高齢者の事故は年々増加しています。平成27年の、高齢者の救急搬送は68,122人でしたが、令和元年には15,783人増加し、83,905人が救急搬送されています(図1―1)。

図1−1:日常生活事故での高齢者の救急搬送人員の推移
図1−1:日常生活事故での高齢者の救急搬送人員の推移

(2)重症度はどれくらいなの?

平成27年からの5年間で救急搬送された高齢者の初診時程度別では、4割以上が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図1−2)。
 また、入院の必要がある中等症以上の割合は、高齢になるにつれて増加しています(図1−3)。

軽 症: 入院の必要がないもの
中等症: 生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症: 生命の危険が強いと認められたもの
重 篤: 生命の危険が切迫しているもの
死 亡: 初診時に死亡が確認されたもの
図1−2:高齢者の初診時程度別救急搬送人員
図1−3:高齢者の年齢別救急搬送人員と中等症以上の割合
図1−3:高齢者の年齢別救急搬送人員と中等症以上の割合

(3)どのような事故で救急搬送されているの?

平成27年からの5年間で、事故発生時の動作分類では、「その他」や「不明」を除くと、「ころぶ」事故が全体の8割以上を占め、次いで「落ちる」事故が多く発生しています。
 日常生活の中での「ころぶ」や「落ちる」による事故が多く発生しており、この2つの事故だけで5年間に30万人以上の高齢者が医療機関に救急搬送されています(図1−4)。

図1−4:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員
図1−4:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員

また、事故種別ごとに入院が必要とされる中等症以上の割合をみると、「おぼれる」事故の98.3%が最も高く、次いで「ものがつまる等」による事故が高くなっています(図1−5)。

図1−5:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合
図1−5:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合

(4)年齢ごとの救急搬送されている人の割合は?

平成27年からの5年間における、年齢ごとの、人口 3)に占める救急搬送人員の割合をみると、年齢が高くなるにつれて救急搬送されている人の割合が増加していることが分かります(図1−6)。

3)東京消防庁管内における人口(平成27年から平成 31 年までの1月の人口)

図1−6:高齢者の年齢別救急搬送人員と人口に占める救急搬送人員の割合
図1−6:高齢者の年齢別救急搬送人員と人口に占める救急搬送人員の割合

2 令和元年中の高齢者の事故

(1)高齢者の「ころぶ」事故の発生状況

高齢者の事故の中で最も多いのが「ころぶ」事故で、毎年多くの高齢者が「ころぶ」事故でケガをして救急搬送されています。その数は年々増加し、令和元年には59,816人が救急搬送されています(図2−1)。
 また、人口に占める救急搬送人員の割合をみてみると、年齢が高くなるにつれて割合も増加しており、高齢になるほど「ころぶ」ことがケガにつながっています(図2−2)。

図2−1:「ころぶ」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−1:「ころぶ」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−2:「ころぶ」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)
図2−2:「ころぶ」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員
と人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)

救急搬送時の初診時程度では軽症が最も多いですが、約4割の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図2−3)。

軽 症: 入院の必要がないもの
中等症: 生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症: 生命の危険が強いと認められたもの
重 篤: 生命の危険が切迫しているもの
死 亡: 初診時に死亡が確認されたもの
図2−3:「ころぶ」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(令和元年中)

事故の発生場所では、「住宅等居住場所」が最も多く、次に「道路・交通施設」となっています。「住宅等居住場所」の33,524人を屋内と屋外に分けてみると、屋内での発生が30,815人で9割以上を占めています。また、住宅等の屋内の発生だけで、「ころぶ」事故全体の5割以上を占めています(図2-4)。
 「住宅等居住場所」で「ころぶ」事故が多く発生した場所を見てみると、「居室・寝室」が最も多く、次に「玄関・勝手口」、「廊下・縁側・通路」となっています(表2−1)。

図2−4:高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(令和元年中)
図2−4:高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(令和元年中)
1位 2位 3位 4位 5位
事故発生場所 居室・寝室 玄関・勝手口 廊下・縁側・通路 トイレ・洗面所 台所・調理場・ダイニング・食堂
救急搬送人員 22,902人 3,187人 2,342人 1,000人 898人
表2−1:住宅等居住場所における高齢者の「ころぶ」事故の発生場所上位5つ(令和元年中)

(2)高齢者の「落ちる」事故の発生状況

高齢者の事故の中で「ころぶ」事故に次いで多いのが「落ちる」事故で、毎年 6,000人以上が救急搬送されています。
 令和元年は7,380人と5年間で最も多く救急搬送されています(図2−5)。
 また、人口に占める救急搬送人員の割合をみると、年齢が高くなるにつれて割合も増加していることが分かります(図2−6)。

図2−5:「落ちる」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−5:「落ちる」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−6:「落ちる」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)
図2−6:「落ちる」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員
と人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)

救急搬送時の初診時程度では4割以上の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図2−7)。

軽 症: 入院の必要がないもの
中等症: 生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症: 生命の危険が強いと認められたもの
重 篤: 生命の危険が切迫しているもの
死 亡: 初診時に死亡が確認されたもの
図2−7:「落ちる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(令和元年中)

事故の発生場所では、7割以上が「住宅等居住場所」で発生しています(図2−8)。
 また、事故原因で多かったものをみると、最も多いのが「階段」での事故であり、全体の約4割を占めています(表2−2)。

図2−8:高齢者の「落ちる」事故の発生場所(令和元年中)
図2−8:高齢者の「落ちる」事故の発生場所(令和元年中)
1位 2位 3位 4位 5位
関連器物 階段 ベッド 椅子 脚立・踏み台・足場 エスカレーター
救急搬送人員 2,895人 1,117人 549人 385人 141人
表2−2:高齢者の「落ちる」事故の事故原因上位5つ(令和元年中)

(3)高齢者の「ものがつまる等」による事故の発生状況

高齢者の事故の中で重症度の高い事故の1つが「ものがつまる等」による事故です。
 令和元年は、1,672人の高齢者がものをつまらせる、誤って飲み込んでしまうことにより救急搬送されています(図2−9)。
 また、人口に占める救急搬送人員の割合をみると、年齢が高くなるにつれて割合も増加していることがわかります。(図2−10)。

図2−9:「ものがつまる等」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−9:「ものがつまる等」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−10:「ものがつまる等」の事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)
図2−10:「ものがつまる等」の事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と
人口に占める救急搬送人員の割合(令和元年中)

救急搬送時の初診時程度では5割以上の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断され、487人が生命の危険がある重症以上と診断されています(図2−11)。

軽 症: 入院の必要がないもの
中等症: 生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症: 生命の危険が強いと認められたもの
重 篤: 生命の危険が切迫しているもの
死 亡: 初診時に死亡が確認されたもの
図2−11:「ものがつまる等」の事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(令和元年中)

事故の発生場所では、約9割が「住宅等居住場所」で発生しています(図2−12)。
 また、製品が判明したもののうち、事故の発生原因で最も多かったものは「包み・袋」で、次に「餅」、「肉」、「おかゆ類」と続いています。特別な食品ではなく、普段の食事の中でも事故は発生しています(表2−3)。

図2−12:高齢者の「ものがつまる等」の事故発生場所(令和元年中)
図2−12:高齢者の「ものがつまる等」の事故発生場所(令和元年中)
1位 2位 3位 4位 5位
事故原因 包み・袋 おかゆ類 ご飯
救急搬送人員 103人 78人 77人 76人 75人
表2−3:高齢者の「ものがつまる等」の事故原因上位5つ(令和元年中)

(4)高齢者の「おぼれる」事故の発生状況

高齢者の事故の中で最も重症化しやすい事故が「おぼれる」事故です。5年間で2,702人が救急搬送され、入院の必要がある中等症以上と診断された高齢者は、毎年 9 割を超えています(図2−13)。
 また、令和元年中の月別の搬送人員では、12月から3月に多く発生していることが分かります(図2−14)。

図2−13:「おぼれる」事故による高齢者の年別救急搬送人員と中等症以上の割合
図2−13:「おぼれる」事故による高齢者の年別救急搬送人員と中等症以上の割合
図2−14:「おぼれる」事故による高齢者の月別救急搬送人員(令和元年中)
図2−14:「おぼれる」事故による高齢者の月別救急搬送人員(令和元年中)

救急搬送時の初診時程度では、他の事故と異なり中等症以上の割合が97.5%と非常に高く、461人が生命の危険がある重症以上と診断されています(図2−15)。

軽 症: 入院の必要がないもの
中等症: 生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症: 生命の危険が強いと認められたもの
重 篤: 生命の危険が切迫しているもの
死 亡: 初診時に死亡が確認されたもの
図2−15:「おぼれる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(令和元年中)

事故の発生場所では、「住宅等居住場所」が448人と約9割を占め、その多くは浴槽で発生しています(図2−16)。

図2−16:高齢者の「おぼれる」事故の発生場所(令和元年中)
図2−16:高齢者の「おぼれる」事故の発生場所(令和元年中)

3 令和元年中の高齢者の事故事例

【ころぶ事故】

  • 公園内を歩行中に、地面の段差につまづき転倒し、大腿部を受傷した(70代 中等症)。
  • 自宅でトイレに行こうとした際に、床で足を滑らせて転倒し、動けなくなった(90代 中等症)。

【落ちる事故】

  • 脚立に登って自宅の庭の立木を剪定中、バランスを崩して約2mの高さから墜落し受傷した(60代 中等症)。
  • 自宅の屋内階段を上っている際に、足を滑らせて後ろ向きに転落し、後頭部及び背部を受傷した(80代 中等症)。

【ものがつまる等による事故】

  • 自宅で団子を食べていた際に、喉に詰まらせ意識がなくなった(80代 重症)。
  • 薬を服用する際に、誤って薬のパッケージごと飲んでしまった(80代 中等症)。

【おぼれる事故】

  • お風呂から上がってこないため心配し様子を見に行くと、浴槽内で顔を水没させ意識のない状態でいるのを発見した(80代 重篤 )。
  • 銭湯で入浴中、意識がもうろうとなりお湯の中に水没してしまい、他の利用客が目撃し引き上げた(70代 中等症 )。