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消防科学セーフティレポート

■ 56号(令和元年)
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発泡器具の発泡性能、消火性能等の検証 本検証では、V字屈曲の発生条件及び放水に対する影響、ホースの耐摩耗性能、損傷補修ホースの耐圧性能の観点から、平織ホース及び綾織ホースの性能を評価・比較した。
検証の結果、発泡性能試験に関しては発泡倍率に大きな差が見られなかったものの、発泡器具の設計放出圧力の違いから、25%還元時間に顕著な差が見られた。また、消火性能試験に関しては、泡の安定性が大きく影響していることが確認できる結果を得た。発泡性能試験及び消火性能試験の結果から、発泡器具の特徴を裏付ける評価モデルを作成した。
消火用ホースの摩耗損傷に関する検証(第3報) 本検証の結果、最も多く発生するホースの摩耗損傷形態は、主にホースのV字屈曲を原因とする局所的な摩耗損傷であり、ホースのノズル寄りの部位ほど発生しやすいことが確認された。また、訓練場舗装面のホースに対する静摩擦係数と、引き摺られたホースの表面の摩耗量は、一定の相関関係を有する可能性が示された。
その結果、V字屈曲の発生条件について解明するとともに、ホース種別ごとの損傷のしやすさと補修効果を示すことができた。これらを分析し、摩耗損傷防止策を提言した。
屋内空間におけるドローンの活用に関する検証 地下街等の屋内空間で発生した爆破テロ等の意図的災害やNBC災害での消防活動において、ドローンを遠隔操作で進入させ、情報収集や環境測定を行うことができれば、消防隊員の二次災害のリスクの低減及び活動の効率化に寄与すると考えられる。しかし、屋内空間でドローンを活用するための知見が十分ではない。このことから、本検証では、市販ドローンを使用し、飛行性能、耐熱性能、ガス検知機能などについて検証し、現状での使用可否について判断するとともに、屋内空間の運用に必要な機体の機能について提言した。
サブストレッチャー及び布担架使用時における傷病者への負担についての検証 本検証では、搬送資器材等の違いによる傷病者への負担の差異を明らかにするため、サブストレッチャーや布担架を用いて、廊下と階段を搬送中の被験者のバイタルサイン等を比較し、今後の救急活動における搬送手段の選定に活用することを目的とした。
検証の結果、被験者のバイタルサインに影響を与える要因として、搬送資器材の違いによる影響は小さく、体位の違いによる影響が大きいことが確認できた。また、傷病者へ与える振動や身体の痛みの部位は搬送方法による特徴が確認できた。
胸骨圧迫の振動等による影響の検証 本検証は、今後のルーカス2の効果的な活用に繋げる資料とすることを目的として、走行中の救急車内の揺れを再現した振動実験装置内において、ルーカス2と用手による胸骨圧迫を心肺蘇生訓練用人形に対して約10分間連続して実施し、それぞれの胸骨圧迫の質(深さ、位置、圧迫解除、速さ)を比較評価した。
フォロワーシップの醸成が消防組織にもたらす効果に関する検証 消防組織におけるリーダーとフォロワーの関係性や相互作用の実態を明らかにするとともに、フォロワーに焦点をあて、フォローシップが業務にどのような影響を与えているか分析した。
その結果、若手には、フォローシップを構成する「提案力」及び「貢献力」が低い「消極的フォロワー」の割合が高く、年齢や階級が上がるにつれ、「提案力」及び「貢献力」の高い「模範的フォロワー」の割合が高くなった。
効果的な身体冷却に関する検証(第2報) 本検証では毒劇物防火衣を着装した長時間運動における効果的な身体冷却方法を明らかにすることを目的とし、冷却ベストの有効性を確認するとともに、冷却剤及び冷却部位を変更した際の効果を検証し、夏季における消防活動中の身体的負担の軽減及び熱中症の予防対策に資するものとした。
検証の結果、45分程度の運動には冷却部位に関わらず融点0℃の冷却剤が効果的であったことや冷却剤の表面温度と被験者が感じている冷え感には差異があることが示唆された。
北川式ガス検知管の性能比較に関する検証 本検証では、代表的な6種類の助燃剤(ガソリン、灯油、軽油、重油、シンナー、エタノール)のガス濃度が0.5ppmから高濃度域における5種類の検知管(鑑識用石油P型・PⅡ型、スチレンSB型、ヘキサンSC型、定性シンナー290TH型)の呈色特性を実験的に明らかにした。
観測地震波を用いた身体の安全確保対策等に関する検証 今後発生が予想される首都直下地震に対する人的被害軽減に寄与するため、観測地震波の揺れを用いて地震発生時における身体防護体勢を検討した。東北地方太平洋沖地震発生時の東京消防庁管内における救急搬送データから負傷機転を分析し、負傷リスクを減らす身体防護体勢を検討するとともに、異なる身体防護体勢において外側広筋等の筋活動量及び頭部における加速度を比較することで、負傷リスクが低く、身体負荷の小さい安定した身体防護体勢を考案した。
特定不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分の構造に関する検証 石膏ボード及びけい酸カルシウム板で仕上げた壁に離隔距離0cmで家庭用ガスこんろの加熱実験を行うことにより、家庭用ガスこんろと接する壁面について、特定不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分に該当する構造例を明確に示すことを目的とし、検証を行った。
その結果、壁との離隔距離0cmで家庭用ガスこんろを使用した場合に、室温35℃で不特定不燃材以外の材料と接する面が100℃以下となる仕上げ条件が明らかになった。
防熱板の有効性に関する検証 本検証では、ガスこんろに設置した防熱剤の材料、板厚及び通気空間を変化させ、防熱板の基準に適合する仕様を明示することを目的とし実験を実施した。
その結果、板厚及び通気空間が大きくなれば特定不燃材料以外の仕上げ部分の温度は低下する傾向にあったが、加熱により防熱板が反り、防熱板となべ底部とが接触すると、特定不燃材料以外の仕上げ部分の温度が高温となり、より大きな通気空間が必要となることが分かった。

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