東京消防庁管内※では、平成20年から平成24年までの5年間に掃除中の事故により2,202人が救急搬送されています。
特に大掃除をする機会が多くなる12月は、掃除中にケガをして医療機関に救急搬送される人が増えています。
- (1) 脚立やいすなどに上がって高所の掃除をしている際に、落ちる事故が多く発生しています。
また、浴槽に乗り天井などの掃除や階段の掃除の際にも落ちる事故が発生しています。 - ⇒ 高い場所の掃除をする時は、安定した足場を選び、片方の手でしっかりと固定された家具等につかまるなど、バランスを崩さないように十分注意するとともに、降りる際は足を踏み外さないよう注意しましょう。
- (2) 掃除機のコードにつまずく、浴室清掃中の転倒など「ころぶ」事故も多く発生しています。
- ⇒ 滑りやすい場所での掃除の際には注意し、転びやすいものを事前に片付けるなど転倒防止を図りましょう。
- (3) 年齢や個々の体力を勘案し、無理な作業は控えてください。
- ⇒ 60歳以上の方の救急搬送が多くなっています。
- (4) 窓や扉の開閉時の指はさみや一時的に置いた物が転落しぶつかるなどの事故も発生しています。
- ⇒ 自分だけでなく、周囲の状況にも注意しましょう。
- (5) 洗剤による事故も発生しています。
- ⇒ 洗剤を使用する際は、以下の点に注意しましょう。
- ○ 種類の違う洗剤を一緒に使用しない。
塩素系洗剤と酸性洗剤を一緒に使用すると有毒なガスが発生することがあります。また、違う洗剤が混ざらないよう、前に使用した洗剤をしっかりと水やお湯などで流してください。 - ○ 洗剤を別の容器に移し替えない。
アルミ缶など金属製の容器は、洗剤と容器が化学反応を起こし容器が破裂することや溶けることがあります。 - ○ 使う前に容器に書かれている注意事項を確認する。
洗剤の容器に書かれてる注意事項などを必ず確認しましょう。
(1) 年別の救急搬送状況
平成20年からは平成24年までに2,202人が掃除中のケガで救急搬送されています。平成24年は、526人が救急搬送されており、年々、増加している状況です(図1)。
図1:過去5年間の掃除中のケガによる救急搬送人員
(2) 月別の救急搬送状況
月別の救急搬送人員では、特に大掃除をする機会が多くなる12月中のケガが多く、他の月に比べ2倍以上(7月は2倍近く)の救急搬送人員となっています(図2)。
図2:月別の掃除中のケガによる救急搬送人員
(3) 初診時程度別の救急搬送人員
医療機関搬送時の初診時程度では、約3人に1人が、入院の必要があるとされる中等症以上と診断されています。
また、43人が重症以上と診断されています(図3)。
図3:初診時程度別の掃除中のケガによる救急搬送人員
(4) 年代別の救急搬送人員
年代別の救急搬送人員では、60歳代から80歳代が多く、60歳以上で1,378人と全体の6割以上を占めています(図4)。
また、高齢者(65歳以上)の搬送人員の推移を見てみると、年々増加している傾向が見られます(図5)。
図4:年代別の掃除中のケガでの救急搬送人員
図5:高齢者の掃除中のケガによる救急搬送人員の推移
(5) 事故種別ごとの救急搬送人員
平成24年中に掃除中のケガにより救急搬送された526人がどんな事故でケガをしているか見てみると、「ころぶ」事故が最も多く41.6%で、次いで「落ちる事故」が21.7%となっています。そのほかの事故として、「切る」事故や「洗剤が目に入るなど」の事故が発生しています(図6)。
図6:事故種別ごとの掃除中の事故(平成24年中)
また、平成24年中に多く発生していた「ころぶ」事故と「落ちる」事故に関連した場所や物などを多い順に見てみると、「ころぶ」事故では居室内での転倒が多く、「落ちる」事故では脚立や踏み台、階段、家具、椅子からの転落が多く発生しています(図7、図8)。
図7:「ころぶ」事故の関連器物別上位
図8:「落ちる」事故の関連器物別上位
(6) 事故事例
浴室内清掃中に転倒、腰部を打撲し歩行困難となったもの。(71歳女性 重症)
椅子の上に立ち冷蔵庫の上を掃除していたら、椅子から転落し腰部を床(フローリング)に打ちつけ、受傷したもの。(85歳女性 中等症)
脚立に乗り浴室の天井を掃除中、脚立がぐらつき空の浴槽内へ転落し、受傷したもの。(75歳女性 中等症)
自宅2階ベランダで室外機の掃除をしていたところ、誤ってコンクリートの路上へ墜落し、受傷したもの。(67歳男性 中等症)
自宅において、風呂掃除をしていたところ塩素系洗剤が左目に入り、受傷したもの。(59歳男性 軽症)
自宅台所のシンクの清掃のため、酸性洗剤と塩素系洗剤をかけたところ、ガスが発生し気分が悪くなったもの。(31歳女性 軽症)