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東京消防庁 > 安全・安心情報 > 事業所向けアドバイス > 非常用発電設備の配管の耐震措置に係るガイドライン


非常用発電設備の配管の耐震措置に係るガイドラインを策定しました


〇 趣旨等

東日本大震災の教訓を踏まえて政府が発表した国土強靭化基本計画や、各省庁等による民間の取組促進施策の一環により、企業やデベロッパーでは災害時の事業継続のために非常用発電設備を設置する事例が増加しています。

特に近年多発している都市部を襲う集中豪雨被害等の影響から非常用発電設備を建築物の中間階や屋上に設置する傾向が高まり、燃料貯蔵タンクとの間に相当距離の危険物配管が敷設されることもあり、当該危険物配管が地震時に損傷した場合、非常用発電設備の機能維持に大きな懸念がありました。

このことから、有識者らによる検討委員会(委員長:寺本隆幸東京理科大学名誉教授)を開催し、シミュレーションを用いて危険物配管に対する地震時の応力を分析した結果、地震で損傷しにくい配管の耐震措置等が判明したことから新たなガイドラインを策定したものです。

非常用発電設備の設置者、施工者の方々等におかれましては、当庁管内において非常用発電設備の燃料配管を敷設する場合、ガイドラインに基づく措置が講じられるようお願いいたします。


非常用発電設備の配管の耐震措置に係るガイドライン


1 適用範囲等

本ガイドラインは、一般取扱所又は少量危険物貯蔵取扱所に該当する非常用発電設備に接続される危険物配管のうち、建築物に設けられるものを指導の対象とする。

なお、非常用発電設備とは、災害の発生等により商用電源の供給が停止した際に稼働する発電設備をいい、電源の供給用途は問わないものとする。


2 耐震性能

地震時における非常用発電設備の機能確保を目標とするため、配管は、「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(日本建築センター。以下「設備耐震指針」という。)に掲げる設計用標準震度「耐震クラスS」を適用する。


【設計用水平震度】

<設備耐震指針抜粋・(一部改)>

 設計用水平震度 K を下式で求める。

 K=Z・Ks

 ここに、

 Ks:設計用標準震度(表1-(1)の値以上とする)

 Z :地域係数(詳細は昭和55年11月27日建設省告示1743号による。東京都は1.0である。)


表1-(1) 設備機器の設計用標準震度

設備機器の耐震クラス 適用階の区分
耐震クラスS 耐震クラスA 耐震クラスB
上層階、屋上及び搭屋 2.0 1.5 1.0
中間階 1.5 1.0 0.6
地階及び1階 1.0 0.6 0.4

◇上層階とは

  • 2〜6階建ての建築物では、最上階を上層階とする。
  • 7〜9階建ての建築物では、上層の2層を上層階とする。
  • 10〜12階建ての建築物では、上層の3層を上層階とする。
  • 13階建て以上の建築物では、上層の4層を上層階とする。

◇中間階とは

  • 地階、1階を除く各階で上層階に該当しない階を中間階とする。

◇各耐震クラスの適用にあっては、設備機器の応答倍率を考慮して耐震クラスを適用する。


3 配管の耐震支持の方法等

(1) 横引き配管

 ア 耐震支持の間隔及び種類

横引き配管は、地震による管軸直角方向の過大な変位を抑制するため、表2に示す耐震支持を行う。

表2 耐震支持の適用

設 置 場 所 耐震支持の設置間隔 耐震支持の種類
上層階、屋上、塔屋、中間階 表2-(a)又(b)に定める配管の標準支持間隔の3倍以内
地階及び1階 A種

* 建築物の時刻歴応答解析が行われている場合で、配管等に作用する地震力が小さい場合には、上記の耐震支持の適用によらず地震力に応じた耐震支持方法の選定を行うことができる。

* 40A以下及び吊り長さが平均20cm以下の配管は、上記に準じて耐震支持を実施する。


表2-(a) 横引き鋼管の標準支持間隔(例1)

呼径(A) 15 20 25 32 40 50 65 80 100 125 150
支持間隔 2m 3m
吊りボルト M10 M12

(出典:(公社)空気調和・衛生工学会 SHASE-S 010-2013 空気調和・衛生設備工事標準仕様書)


表2-(b) 横走り管の標準支持間隔(例2)

<吊り金物による吊り>

呼径(A) 15 20 25 32 40 50 65 80 100 125 150
支持間隔 2m以下 3m以下

(出典:国土交通省大臣官房官庁営繕部 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)平成25年版)


図1 横引き配管の耐震支持間隔及び種類


 イ 管軸方向の過大な変位を抑制する支持

配管の管軸方向の直線部の長さが25mを超える場合は、25mごとに曲がり部分や直線部分に管軸方向の過大な変位を抑制する支持を行う。

 ウ 配管の端部の耐震支持

配管の端部(可とう管等接続部)から2m以内の範囲は耐震支持を行うとともに、管軸方向の過大な変位を抑制する支持を行う。


図2 管軸直角方向と管軸方向


(2) 立て配管

立て配管は、地震による管軸直角方向の過大な変形を抑制し、かつ、建築物の層間変位に追従するよう耐震支持を行う。地震力、配管等重量、層間変位による反力を考慮した耐震支持を行う。

(3) 配管屈曲部

配管の屈曲部に設けるエルボは、ロングエルボを使用する。

なお、ロングエルボとは、次のア又はイに定めるものをいう。

 ア 表3に示す管継手に係る各種JIS規格により「ロング」に小分類されているエルボ

 イ 曲げ半径が管径の約1.5倍以上のエルボ


表3 一般配管用鋼製突合せ溶接式管継手(形状による種類及びその記号)

形状による種類(JIS B2311) 記 号
大 分 類 小 分 類
45°エルボ ロング 45E(L)
ショート 45E(S)
90°エルボ ロング 90E(L)
ショート 90E(S)

(4) 建築物導入部

屋外(地中を含む。)から建築物内へ導入する配管は、地盤や外部支持物と建築物の間の揺れ方の違いによる変位を吸収できるように、可とう管継手の設置、貫通部分へのスリーブ設置のいずれか又は両方の措置を講ずる。

(5) エキスパンションジョイント部

原則として、配管はエキスパンションジョイント部を通過させない。

なお、やむを得ず通過させる場合には、配管に対して変位を吸収できる措置を講ずる。


4 耐震支持例

(1) S及びA種による耐震支持

配管の耐震支持は、図3及び図4に示すほか、設備耐震指針第1編、解表6.2−2(a)及び(b)並びに解表6.3−2(a)及び(b)に示すS及びA種の例により耐震支持を行う。

なお、耐震支持部材は、設備耐震指針第1編、付表2により選定する。


図3 横配管の耐震支持の例

図4 梁貫通部における耐震支持の例


(2) 簡易壁(ALCパネル、PCパネル、ブロック等)での配管の支持

簡易壁による配管の支持は、原則として耐震支持とみなさない。だたし、小口径の配管の場合で地震時に構造体との相対変形に追従できる場合で、前(1)と同等程度の耐震性を有している場合はこの限りではない。


5 その他

危険物施設又は少量危険物貯蔵取扱所の設置等において、本ガイドラインを適用し配管を敷設する場合は、一般取扱所の許可申請書類や少量危険物貯蔵取扱所の設置・変更の届出書類の図面、仕様書等に、「非常用発電設備の配管の耐震措置に関するガイドラインに基づき施工する。」などと付記して申請又は届出してください。