リチウムイオン電池搭載製品の出火危険

画像:充電していたカメラ用バッテリーからの出火状況
充電していたカメラ用バッテリーからの
出火状況
画像:火炎が噴出している状況
火炎が噴出している状況

火災発生状況

リチウムイオン電池を搭載した製品から出火する火災が多く発生しています。出火要因をみると、使用者の明らかな誤使用(分解、衝撃、充電方法誤り等)により出火する火災の他に、製品の欠陥により製品から突然出火する火災も発生しています。

図1:リチウムイオン電池関連火災状況(最近10年間)
図2:出火要因別状況(令和5年中)

近年の火災状況

表1 リチウムイオン電池関連火災状況(最近10年間)
年別 火災件数 損害状況
合計 建物 車両 その他 "燃焼床面積"
"(㎡)"
"燃焼表面積"
"(㎡)"
死者 負傷者
小計 全焼 半焼 部分焼 ぼや
26年 19 18 - - 3 15 - 1 11 6 - 6
27年 26 21 - - 3 18 3 1 2 53 - 3
28年 55 48 - - 6 42 2 2 77 40 - 22
29年 56 47 - - 5 42 7 5 32 41 - 4
30年 82 69 - 1 4 64 6 7 74 40 - 10
元年 102 95 1 1 11 82 2 5 400 257 - 12
2年 104 93 - 2 11 80 5 6 200 195 - 22
3年 141 124 5 5 16 98 6 11 860 289 - 30
4年 150 124 4 - 17 103 10 16 513 109 1 42
5年 167 151 1 1 23 126 2 14 811 119 - 14

製品用途別の火災状況

令和5年中における製品用途別の火災状況をみると、モバイルバッテリーから出火した火災が最多で、次にスマートフォン、電動アシスト付自転車となっています。出火した製品は多種にわたっています。

図3:製品用途別火災状況(令和5年中)

その他の内訳は、非接触型体温測定器、センサー式手指消毒器、CO2濃度測定器、水素水生成器、掃除用電動ブラシ、ハンディターミナル、ビデオカメラ、カラオケマイク、電動グラスホルダー、電気あんま器、健康器具、ドローン用バッテリー、電動車いす用バッテリー、自動車用バッテリー、電気自動車、電気バイク各1件を含みます。

製品用途別の出火要因

令和5年中に発生した火災の製品用途別の出火要因をみると、いつも通り使用していたが出火が39件(23.4%)、衝撃等が18件(10.8%)、分解廃棄等が16件(9.6%)発生しています。

また、製品の欠陥により出火した火災が6件(3.6%)発生しています。出火要因が特定できないものは67件(40.1%)となっています。

 
表2 出火要因別火災状況(令和5年中)
出火要因 合計 モバイルバッテリー 携帯電話機 電動アシスト付自転車 コードレス掃除機 電動工具 タブレット ポータブル電源 玩具製品 ノートパソコン 加熱式たばこ LED ポータブルスピーカー ワイヤレスイヤホン ポータブルプレーヤー 携帯扇風機 防犯カメラ その他 不明
合計 167 44 17 14 13 11 9 7 6 5 4 3 3 2 2 2 2 16 7
いつも通り使用
していたが出火
39 21 1 2 1 2 2 1 1 1 - - 2 1 1 1 - 2 -
外部衝撃
(落下・外力等)
18 3 6 1 - - 2 - - 1 1 1 - - 1 - 1 - 1
分解・廃棄等 16 - 9 - - - 4 - 1 1 - - - - - - - 1 -
充電方法誤り 16 4 - 2 4 - - - 1 - 1 1 - - - - - 3 -
製品の欠陥
(リコール含む)
6 1 - 2 1 - - - - 1 - - - - - - - 1 -
その他 5 - 1 - - 1 - - 2 - - - - - - - - 1 -
不明 67 15 - 7 7 8 1 6 1 1 2 1 1 1 - 1 1 8 6

出火した製品の入手時期等について

令和5年中に発生した火災について、出火した製品の入手時期等をみると、入手時期が1年未満の製品から出火した火災は22件(13.2%)で最多となっています。

表3 出火要因別商品の入手時期(令和5年中)
出火要因 合計 製品の入手時期 PSEマークの有無
1年未満 2年未満 3年未満 4年未満 5年未満 6年未満 6年以上 不明 あり なし 不明
合計 167 22 19 20 11 4 8 24 59 35 13 119
いつも通り使用
していたが出火
39 4 6 6 4 2 2 6 9 5 2 32
外部衝撃
(落下・外力等)
18 - 2 - 1 - 1 1 13 6 1 11
分解・廃棄等 16 1 - 3 1 1 1 2 7 5 - 11
充電方法誤り 16 5 3 - - 1 1 4 2 6 2 8
製品の欠陥
(リコール含む)
6 1 - 1 - - - 3 1 - 1 5
その他 5 - - - - - - 1 4 - - 5
不明 67 11 8 10 5 - 3 7 23 13 7 47

出火前の製品の状況

令和5年中に発生した火災について、出火前の製品の状況をみると、出火前に何らかの異常がある製品から出火した火災は16件(9.6%)です。出火時の充電状況は、充電中が82件(49.1%)、非充電中(待機中含む)が65件(38.9%)、使用中が10件(6.0%)となっています。

表4 出火要因別出火前の製品異常および出火時の充電状況(令和5年中)
出火要因 合計 出火前の製品異常 出火時の充電状況
特になし ふくらみ 充電できない 電源が入らない その他 不明 充電中 非充電中 使用中 その他 不明
合計 167 91 7 2 1 6 60 82 65 10 2 8
いつも通り使用
していたが出火
39 26 1 - - - 12 20 14 5 - -
外部衝撃
(落下・外力等)
18 8 1 - - - 9 1 15 - 1 1
分解・廃棄等 16 4 1 1 - 1 9 - 16 - - -
充電方法誤り 16 3 - - - 2 6 16 - - - -
その他 11 1 1 1 - - 5 5 5 - - 1
特定できない 67 41 3 - 1 3 19 40 15 5 1 6

出火直前の使用状況

令和5年中に発生した火災について、出火直前の使用状況をみると、1週間以内に使用しているものが3件(1.8%)、初めて使ったものが2件(1.2%)発生しています。
また、出火した製品の入手経路はネット通販が59件(35.3%)。モバイルバッテリーの入手経路は44件中ネット通販が13件(29.5%)で最多となっています。

表5 出火要因別出火直前の使用状況(令和5年中)
出火要因 合計 出火直前の使用状況
毎日使用 1週間以内 1週間~
3か月以内
3か月~
1年以内
初めて使用 その他 不明
合計 167 50 3 16 10 2 8 78
いつも通り使用
していたが出火
39 16 2 5 3 - - 13
外部衝撃
(落下・外力等)
18 3 - 2 - - - 13
分解・廃棄等 16 3 - - - - 1 12
充電方法誤り 16 2 1 2 1 - 1 9
その他 11 4 - 1 - 1 1 4
特定できない 67 22 - 6 6 1 5 27
表6 出火した製品の入手経路
入手経路 合計 モバイルバッテリー 携帯電話機 電動アシスト自転車 コードレス掃除機 電動工具 タブレット ポータブル電源 玩具製品 ノートパソコン 加熱式たばこ LED ポータブルスピーカー ワイヤレスイヤホン ポータブルプレーヤー 携帯扇風機 防犯カメラ その他 不明
合計 167 44 17 14 13 11 9 7 6 5 4 3 3 2 2 2 2 16 7
ネット通販 59 13 4 5 12 4 - 2 3 1 2 1 1 1 - - 2 6 2
家電量販店 17 5 1 2 1 1 2 - - 1 - 1 1 - 1 - - 1 -
純正メーカー
から直接購入
5 2 1 - - - - - - 1 - - - - - - - 1 -
人からもらった 5 - - 2 - 1 - - - - - - 1 - - - - 1 -
その他 24 7 2 3 - - 1 3 - 1 2 - - - - - - 3 2
不明 57 17 9 2 - 5 6 2 3 1 - 1 - 1 1 2 - 4 3

火災のメカニズム

画像01

リチウムイオン電池は、繰り返し充電、放電できる電池のことで、二次電池の一つです。この電池は、主に小型で大量の電力を必要とする製品(スマートフォン、コードレス掃除機、ノートパソコンや電動工具など)に使用され、他の二次電池と比べて高容量、高出力、軽量という特徴があります。

リチウムイオン電池は、電解液として可燃性の有機溶剤を使用しているため、衝撃等により内部の正極板と負極板が短絡し、急激に加熱後、揮発した有機溶剤に着火して出火することがあります。

火災事例

運行中の電車内でモバイルバッテリーから出火した火災

運行中の電車内において、乗客が鞄の中に入れていたモバイルバッテリーが何らかの要因で短絡し出火したものです。火災に気が付いた他の乗客が初期消火と通報を実施しています。

電車内の焼損状況
モバイルバッテリーの焼損状況

駅ホームでモバイルバッテリーから出火した火災

駅利用客が、鞄の中から煙が出ているのを利用客から知らされたため、ホーム上に鞄を置いたところ、鞄の中に入れていたモバイルバッテリーが何らかの要因で短絡し出火したものです。

駅ホームの状況
モバイルバッテリーの焼損状況

上映中の映画館でモバイルバッテリーから出火した火災

シアター内で映画鑑賞中の観客が所持していたリュックの中のモバイルバッテリーが何らかの要因により出火したものです。映画館の従業員が観客の避難誘導を行っています。

シアター内の状況
モバイルバッテリーの焼損状況

無人の事務所で携帯型扇風機から出火した火災

無人の事務所のデスク上で充電されていた携帯型扇風機が何らかの要因で短絡し出火したものです。下階の居住者が自動火災報知設備の鳴動音で火災を発見しています。

事務室の焼損状況
携帯型扇風機の焼損状況

モバイルパソコンからバッテリーを取り外す際に出火した

共同住宅の居住者が、モバイルパソコンのバッテリーが膨らんでいたため、バッテリーを工具で取り外そうとした際にバッテリーを損傷させたことでバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。

モバイルパソコンの焼損状況
バッテリーセルの焼損状況

非純正品のACアダプタに接続したバッテリーから出火した火災

住宅の居室内で充電していた電動アシスト付自転車用バッテリー(以下、バッテリーという)から出火したものです。居住者が純正品のACアダプタとは出力が異なるACアダプタを使用し、バッテリーを充電したことにより電気的不具合が発生し、バッテリーセルが内部短絡し出火しました。

出火箇所の状況
バッテリーの焼損状況

社告品のバッテリーを使用して出火した火災

共同住宅6階の居室で、充電中の電動アシスト付自転車用バッテリー(以下「バッテリー」という。)のセル内部で短絡して出火したものです。この火災で4人の傷者が発生しています。出火したバッテリーは、バッテリー内部の劣化により発火の危険性があるとの理由でリコールが実施されていました。

出火箇所の状況
バッテリーの焼損状況

新築工事現場で充電中のバッテリーが出火した火災

新築工事現場の建物内において作業で使用する電動工具のバッテリーを充電していたところ、何らかの要因でバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。出火したバッテリーは、電動工具と同じメーカーの純正品ではなく、互換性がある海外メーカーの非純正品バッテリーでした。

出火箇所の状況
バッテリーの焼損状況

非純正品の充電器でバッテリーを充電中に出火した火災

事務所の倉庫内でビデオカメラ用のバッテリーを充電していたところ、何らかの要因でバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。出火したバッテリーの充電に使用した充電器は、仕様上の専用の充電器ではありませんでした。

バッテリーの焼損状況(防犯カメラ映像)
バッテリーの焼損状況
(防犯カメラ映像)
火炎が噴出している状況 (防犯カメラ映像)
火炎が噴出している状況
(防犯カメラ映像)
バッテリーの焼損状況

火災を防ぐために

  1. 使用する前に取扱説明書をよく確認する。
  2. 衝撃を与えないよう適切に取り扱い、むやみに分解しない。
  3. 製造事業者が指定する充電器やバッテリーを使用する。
  4. 充電する際は整理整頓された場所や不燃性のケースなどに入れて充電をする。
  5. 充電器の接続部が合致するからといって、充電電圧を確認せずに使用しない。
  6. 膨張、充電できない、バッテリーの減りが早くなった、充電中に熱くなるなどの異常がある場合は使用をやめ、製造事業者や販売店に相談する。
  7. 製造事業者の問合せ先の記載がない製品や販売店や製造事業者の連絡先に電話がつながらない製品もあるので、製品を購入する際には慎重に検討する。
  8. 熱のこもりやすい鞄の中などでの使用を控える。
  9. 万が一の被害に備えて不燃性のケースなどに収納する。
  10. 処分する際は、製品の取扱説明書をよく確認する。
  11. 不用品を処分する際は、地域のごみ回収方法をよく確認する。

問合せ先

  • 調査課