アルミ缶など金属製の容器は、洗剤と容器が化学反応を起こし容器が破裂することや溶けることがあります。
塩素系洗剤と酸性洗剤を一緒に使うと、有毒なガスが発生することがあります。
また、違う洗剤が混ざらないよう、前に使用した洗剤をしっかりと水やお湯などで流してください。
洗剤の容器に書かれている注意事項などを必ず確認しましょう。
アルミニウム製の飲料用容器にアルカリ性洗剤を入れたことにより、アルミ缶が破裂し、複数のけが人が出る事故が発生しました。
この事故は、アルカリ性洗剤をコーヒー缶(アルミニウム製)に移し、蓋をしたことにより洗剤の成分とアルミニウムが化学反応を起こし、発生した水素ガスが密封された缶の中に溜まり、缶の内圧が高まり破裂したものです。
洗剤は性状等を考慮し、洗剤の変質や容器の腐食などがないように、様々な安全策に基づき専用の容器に入れ販売されています。
このため、小分けや保管のために専用容器以外へ移し替えることは事故を引き起こすことがあります(表1)。
容器 | ||
洗剤 | 危険性 | |
アルミ缶 | アルカリ性洗剤 |
洗剤の成分とアルミニウムやスチールとの化学反応により、水素が発生する。
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アルミ缶 | 酸性洗剤 | |
スチール缶 | 酸性洗剤 | |
アルミ缶にアルカリ性洗剤を入れ自然放置し、容器の変化を観察しました。
【化学反応】アルカリ性洗剤に含まれる水酸化ナトリウムは、アルミニウムを溶解し水素を発生させます。
1円玉と同量の1gのアルミニウムを、アルカリ性洗剤で全て反応させた場合、1,336mlの水素が発生します。
アルミ缶内部では、容器のアルミニウムと洗剤が化学反応を起こしていました(A)。化学反応によりアルミニウムが溶解し容器側面にひび割れが現れ、時間経過とともにひび割れが広がり、容器に穴が開き洗剤が漏れ出しました(B、C)。
同様にアルカリ性洗剤を入れたアルミ缶を密閉するとアルミ缶の内圧が上昇し破裂します(D、E)。
@アルカリ性洗剤入れたアルミ缶 |
A徐々に気体が発生したアルミ缶の内部の状況 |
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Bアルミ缶が腐食し洗剤が漏れ出した状況 |
C洗剤を排出し内部の溶解状況 |
Dアルカリ性洗剤を入れ密閉したアルミ缶 |
E【約2時間後】アルミ缶の内圧が上昇し破裂した状況 |
家庭用洗剤は家庭用品品質表示法により成分、液性、用途、使用量の目安、使用上の注意などが製品に表示されています。
洗剤は用途に応じて、成分や液性など様々であり、複数の洗剤を使用することは事故の危険があります。
特に、塩素系洗剤は次亜塩素酸ナトリウムを含んでいるため混ぜたものによっては有毒な塩素ガスが発生する恐れがあります。
密封した容器の中に、塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜた容器を置き、塩素に反応する(紫色に変色)試験紙の色の変化により塩素ガスの拡散状況を観察しました。
【化学反応】塩素系洗剤は酸性洗剤と混ざることにより、塩素系洗剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムがpHの低下により分解が進み、塩素ガスが発生します。
5%の次亜塩素酸ナトリウム1mlに同量の酸性洗剤を混ぜたときに16.1mlの塩素ガスが発生します。
塩素濃度(ppm) | 吸入による急性中毒症状 |
0.35 | 刺激臭により存在を感じる |
1.0 | 長時間に耐え得る限界 |
3.5 | 強い刺激臭を感じ、30分から1時間は耐えられるが、眼、鼻、のどに刺激 |
35〜50 | 30分から1時間で死亡 |
900以上 | ただちに死亡 |
塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜたガラス容器を密閉した金属製容器の中に置いた。ガラス容器に近い位置からすぐに試験紙が紫色に変化し始め、約3分後には容器内の全ての試験紙が紫色に変化しました。
また、容器内の塩素ガス濃度を測定してみたところ300ppmと人体に危険な濃度でした。
@塩素系洗剤に酸性洗剤を混ぜ試験紙を敷きつめた容器を密封した。 |
A塩素ガスが拡散している状況(約3分間で全ての試験紙が変色) |
B人体に危険な濃度であった (塩素ガス濃度300ppm)。 |