指等を切断する事故に注意!
1 東京消防庁管内1)では、平成30年から令和4年2)までの5年間に、1,125人が指等を切断する事故により救急搬送されています(図1)。
1)東京都のうち稲城市、島しょ地区を除く地域
2)令和4年の数値は暫定値
事故を防ぐために
- 工場での事故が多くみられます。電動のこぎり、プレス機、裁断機等を使用する際は、特に注意しましょう。
- 機械類のメンテナンスをする際は、電源を切る等、機械の動きが停止されていることを確実に確認してから行いましょう。
- ドアを閉める際には、特に蝶番側に手指が差し込まれていないかよく確認しましょう。
12歳未満の子どもでは、ドアによる指の切断が多くを占めています。保護者は、ドアの開閉時に子どもがどこにいるのか確認するとともに、指挟み防止グッズなどを活用して子どもを事故から守りましょう。
2 年代別救急搬送人員
40代が最も多く234人、次いで50代が230人となっており、20代から70代にかけて多くなっています。
また、0歳〜4歳でも31人と、乳幼児でも発生しており、保護者の注意が必要です(図2)。
図2 年齢別救急搬送人員3 事故発生場所別の救急搬送人員
事故発生場所別の上位5か所をみると、工場(製造所・作業場)が408人と最も多く、次いで住宅等(専用住宅・共同住宅・寮・寄宿舎)が241人と多くなっています(図3)。
図3 事故発生場所別救急搬送人員(上位5か所)4 初診時程度別救急搬送人員
救急搬送時の初診時程度をみると、7割以上が入院の必要がある中等症以上と診断されており、生命の危険が切迫している重篤と診断されている事例もあります(図4)。
重 篤: | 生命の危険が切迫しているもの |
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重 症: | 生命の危険が強いと認められたもの |
中等症: | 生命の危険はないが入院を要するもの |
軽 症: | 軽易で入院を要しないもの |
5 関連器物別事故発生状況
関連器物別の事故発生状況(上位5つ)をみると機械によって受傷した人が560人と圧倒的に多く、次いでドアや窓等の開口部が92人、台所用品が74人となっています(図5)。
図5 関連器物別事故発生状況(上位5つ)6 関連器物の内訳(上位3つ)と事故事例
【機械による事故の内訳と事故事例】
1 | 工事現場において、電気のこぎりで作業中にのこぎりがキックバックし、手の指を切断した(40代 中等症)。 |
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2 | 裁断作業中、紙が詰まったため取り除こうとして機械の中に手を入れてしまい、指を切断した(50代 中等症)。 |
3 | 送風機の点検作業中に、機械のファンベルトに手袋が巻き込まれて指を切断した(30代 中等症)。 |
【開口部による事故の内訳と事故事例】
1 | 換気のため金属の扉を解放したところ、強風によって扉が勢いよく閉まり、指を挟まれ切断した(30代 中等症)。 |
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2 | ベランダ窓を自分で勢いよく閉めた際に、誤って指を挟んでしまい切断した(40代 軽症)。 |
3 | ドアと蝶番の間に指を置いた状態で、そばにいた人が誤ってドアを閉めてしまい、指を挟まれ切断した(70代 中等症)。 |
【車体による事故の内訳と事故事例】
1 | 車両の後退時に誘導中、周囲の機械と車両の後部部分が接触しそうになったため手を出したところ、指が挟まり切断した(60代 中等症)。 |
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2 | 工事作業中に、誤ってトラックのあおりに指を挟み、切断した(70代 中等症)。 |
3 | オートバイの点検作業中に、ドライブベルトに指を巻き込まれて切断した(40代 中等症)。 |
7 12歳未満の子供による事故
12歳未満の子どもに注目し、関連器物別に搬送人員を見てみると、手動ドアなどの開口部で指等を切断する事故が圧倒的に多くなっています(図6)。
また、発生場所別では自宅が24件と最も多くなっており、自宅以外の保育園・幼稚園などでも多く発生していることがわかります(図7)。
※ その他の家具とは、タンス、棚等 図6 関連器物別救急搬送人員(12歳未満) 図7 発生場所別救急搬送人員(12歳未満)
【12歳未満の子どもの事故事例】
1 | 自宅の机に置いてあった電動のテープカッターに指を差し込んでしまい、切断した(0歳 軽症)。 |
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2 | 親が操作する電動キックボードに座って歩道上を走っていたところ、車輪に手を巻き込まれて指を挟み、切断した(7歳 中等症)。 |
3 | 兄弟がスタンドを立てた状態で自転車を漕いでいたところ、チェーンに指を差し込んでしまい指を切断した(1歳 中等症)。 |
12歳未満の子どもでは、ドアによる指の切断が全体の多くを占めています。
保護者は、ドアの開閉時に子どもがどこにいるのか確認するとともに、指はさみ防止グッズなどを活用して子どもを事故から守りましょう。
もしものときの応急手当
○直接圧迫止血法
出血部位をガーゼやタオルなどで直接強く圧迫して出血を止める方法
圧迫する材料の要件
- ① 清潔なもの。
- ② 厚みのあるもの(薄いものを何枚も重ねてもよい)。
- ③ 出血部位を覆うことのできる大きさがあるもの。
直接圧迫止血の行い方
- 出血部位にガーゼやタオルなどを当て、手で強く圧迫します。片手で止血できなければ両手で圧迫します。
- 圧迫をしても血液がにじみ出てくる場合は、圧迫している箇所にさらにガーゼやタオルなどを重ねて強く圧迫します。
- 感染防止のため血液には直接触れないようにし、ゴム手袋やビニール袋を使用しましょう。
※上級救命講習テキスト ガイドライン2020対応 参照