第5章 大地震時の東京の被害想定
この章のねらい
基本科目
【防火・防災】
達成目標
地震時の地域の被害想定について知っており、住民に説明できる。
1 首都直下地震等による東京の被害想定
いつ発生するか分からない首都直下地震などへの備えを万全にしておくために、最大の被害像を正確に把握しておくことが必要です。東京都は、令和4年5月に首都直下地震等による東京の被害想定を見直し、「東京都の新たな被害想定」を策定しました。
この新たな被害想定は、住宅の耐震化や不燃化などの様々な変化や平成28年熊本地震など全国各地で発生した大規模な地震に関する最新の科学的知見に基づくもので、概要は次のとおりです。
(1) 想定結果の特徴
@都心南部直下地震
人的被害 | 死者 | 6,148人 | |
---|---|---|---|
原因別 | 揺れ等 | 3,666人 | |
火災 | 2,482人 | ||
負傷者 | 93,435人 | ||
原因別 | 揺れ等 | 83,489人 | |
火災 | 9,947人 | ||
物的被害 | 建物被害 | 194,431棟 | |
原因別 | 揺れ等 | 82,199棟 | |
火災 | 112,232棟 | ||
避難者 | 約299万人 | ||
帰宅困難者 | 約453万人 |
○東京都内で最大規模の被害が想定される地震で、震度6強以上の範囲は区部の約6割に広がる。
○死者が最大で、約6,000人で、建物被害は約19万棟発生すると想定されている。
A多摩東部直下地震
人的被害 | 死者 | 4,986人 | |
---|---|---|---|
原因別 | 揺れ等 | 3,068人 | |
火災 | 1,918人 | ||
負傷者 | 81,609人 | ||
原因別 | 揺れ等 | 74,341人 | |
火災 | 7,269人 | ||
物的被害 | 建物被害 | 161,516棟 | |
原因別 | 揺れ等 | 70,108棟 | |
火災 | 91,408棟 | ||
避難者 | 約276万人 |
○多摩地域に大きな被害が想定され、震度6強以上の範囲は多摩地域の約2割に広がる。
○建物被害は約16万棟、死者は約5,000人発生すると想定されている。
東京都「東京都の新たな被害想定〜首都直下地震等による東京の被害想定〜」(令和4年5月25日公表)を基に作成
この他の想定地震に対する概要や詳細な被害想定は、東京都のHPで確認できます。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1000902/1021571.html
(2)室内被害による人的被害
地震により家具・家電などの転倒・落下・移動などの室内被害が発生すると、予想される死者・負傷者数は次のとおりです。負傷しないように、家具類の転倒・落下・移動防止対策を実施することが重要です。
@ 死者数(冬・夕方)
都心南部直下地震 | 多摩東部直下地震 | 大正関東地震 | 立川断層帯地震 | |
---|---|---|---|---|
東京都 | 239 | 216 | 140 | 54 |
区部 | 199 | 150 | 106 | 0 |
多摩 | 40 | 66 | 34 | 54 |
A 負傷者数(冬・夕方)
都心南部直下地震 | 多摩東部直下地震 | 大正関東地震 | 立川断層帯地震 | |
---|---|---|---|---|
東京都 うち重傷者 |
6,496 | 5,721 | 4,247 | 1,465 |
1,362 | 1,246 | 739 | 239 |
東京都「東京都の新たな被害想定〜首都直下地震等による東京の被害想定〜」(令和4年5月25日公表)を基に作成
2 南海トラフ巨大地震
南海トラフは、日本列島が位置する大陸のプレートの下に、海洋プレートのフィリピン海プレートが南側から年間数km2の割合で沈み込んでいる場所です。この沈み込みに伴い、2つのプレートの境界には、ひずみが蓄積されています。過去1,400年間を見ると、南海トラフでは約100〜200年の間隔で蓄積されたひずみを解放する大地震が発生しており、近年では、昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震(1946年)がこれに当たります。昭和東南海地震及び昭和南海地震が起きてから70年近くが経過しており、南海トラフにおける巨大地震発生の可能性が高まってきていると言われています。
令和4年5月に公表された東京都の新たな被害想定において、南海トラフ巨大地震による被害の概要は次の通りです。
(1)地震動分布
都内の多くの地域で震度5弱となっていますが、区部の東部並びに多摩地域の東部では震度5強となっています。
なお、震度6弱が想定される範囲はごく一部に留まっています。
(2)想定結果
南海トラフ巨大地震が発生した場合の地震動による、建物被害・人的被害等は、最大震度がごく一部の地域で6弱となるものの、ほとんどの地域で5強以下となることから首都直下地震等と比較して極めて限定的なものになると想定されています。
ただし、帰宅困難者や、被害の大きい他府県からの避難者の受入れ、物資不足等、みなさんの生活にも影響がでることが予想されます。
3 自分の住んでいる地域の被害想定を調べよう
東京都の被害想定の概要を理解したら、次は自分の住んでいる区市町村の被害想定を調べてみましょう。各区市町村の被害想定は、ホームページなどで調べることができます。