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東京消防庁てびき・ハンドブック消防少年団 指導者ハンドブック>第11章 救急

第11章 救急

救急車はどんなときに呼ぶの?・・・キッズ団員

第12章 救急・・・ジュニア団員

第8章 救急・・・リーダー団員

第7章 東京消防庁の救急行政と救命講習・・・高校生団員

この章の趣旨

  • 応急手当の方法を習得するとともに、普通救命講習等の資格の習得を目指す。
  • 救急車の適正利用について理解し、救急相談センター等を必要な時に活用できるようになる。

団員の達成目標

(注)キ:キッズ団員用カリキュラム  ジ:ジュニア団員用カリキュラム 
リ:リーダー団員用カリキュラム 高:高校生準指導者用カリキュラム

科目 指導内容 達成目標
基本科目 救急
  1. 救急の知識
  2. 応急手当、包帯法
  3. 心肺蘇生法(AEDの取扱いを含む)
  4. 外傷・急病の知識と手当
  5. 傷病者の搬送方法
救急車の利用法を知っている
  1. 基本的な応急手当の方法を知っている
  2. 救命入門コースの内容について習熟している
  3. 救急相談センターの利用方法を知っている
  1. 救急車の正しい利用法を知っている(救急受診ガイドを含む)
  2. 普通救命講習を修了している
  3. 傷病者の搬送方法を知っており、自ら実践できる
  1. 救急車の適正利用について、説明できる
  2. 上級救命講習を修了している

1 救急の知識

(1)応急手当の重要性

応急手当とは、救急車が来るまで、または医師に診察してもらうまでの一時的な処置のことです。

いつ、ケガをしたり、病気になるかわかりません。119番通報をすれば、直ぐに救急車がかけつけてくれるから大丈夫と考える方もいるでしょうが、東京都内では、救急車が要請を受けてから到着するまでに平均で7〜8分程度かかります。

少しの応急手当の遅れが、生死に係わる場合もあります。より多くの人々が応急手当の方法をマスターしておくことによって、大切な命をもっと多く救うことが出来るかもしれません。さらに、応急手当には、命を救うということだけではなく、ケガ人や病人の症状の悪化を防いだり、苦痛を和らげたり、予後を良くしたりといった効果もあります。

また、震災や風水害等で、同時に多数の傷病者が発生したときは、平常時のように救急車に期待することは困難です。このようなときは、自主救護に努めなければなりません。

応急手当はより多くの人が身に付けて、いざというときに備えることが必要です。

(2)応急手当の定義

  1. 救命処置とは、「心肺蘇生」、「AEDを用いた除細動」、気道異物除去」の3つをいいます

    *心肺蘇生:反応と普段どおりの呼吸がなく、呼吸と心臓が停止若しくはこれに近い状態になった時に、胸骨圧迫と人工呼吸を行うこと。

    *AEDを用いた除細動:「突然の心停止」の原因となる重症不整脈に対し、AED(自動体外式除細動器)を用いて除細動を行うこと。

    *異物除去:気道(空気の通り道)に異物を詰まらせ呼吸ができなくなっている人の異物を取り除くこと。

  2. その他の応急手当(ファーストエイド)とは、心肺停止や気道異物以外の傷病者に対して悪化防止を主な目的として行う最小限の手当をいいます(狭義の応急手当)。救命処置と狭義の応急手当を併せて、広義に応急手当といいます。

2 止血法

大出血があるときは、迅速・適切に止血できないと生命に危険があります。一般の人が行う止血法としては出血しているところをガーゼなどで直接圧迫する方法(直接圧迫止血法)があります。出血部位を確認したら、清潔なガーゼ、ハンカチ、タオルなどを重ねて出血部分に当て、その上を圧迫して止血をします。圧迫したにもかかわらず血がにじみ出る場合は、さらにその上にガーゼやタオルなどを重ねて圧迫します。この際、はじめに当てたガーゼやタオルなどは外さないでください。圧迫したにもかかわらず、ガーゼが血液で濡れてくる理由としては、圧迫位置が出血部位から外れている、または圧迫する力が弱いなどが考えられます。直接圧迫止血法では出血部位を確実に押さえることが重要です。

止血の際には、感染防止のため救助者が傷病者の血液に触れないように、ビニール手袋やビニール袋を使用してください。

3 包帯法

(1)包帯の目的

包帯は、外傷の手当に用いられ、次のような目的があります。

  1. 傷を保護し感染を防ぐ
  2. 出血している傷を圧迫し、止血する
  3. 損傷部位を固定し、動揺を防ぐ

(2)包帯法の基本

  1. 土砂で汚れた、犬に咬まれたなど、汚れが付いた傷は、傷口を水道水で十分に洗い流してから手当てを行い、その後、病院で診察を受けさせましょう。
  2. 傷口に付いた土や小石などが見える場合は、水道水で洗い流します。
  3. 傷口に当てるガーゼなどは滅菌したものを用い、不潔なガーゼなどは使わないようにしましょう。
  4. 傷口に当てる部分は清潔に扱い、手を触れないようにしましょう。
  5. 包帯は、強く巻き過ぎると血の巡りが悪くなり、ゆるすぎると包帯が崩れたりします。普段から練習しておきましょう。
  6. 包帯を巻くときは、指先を覆わずに見えるようにし、はれや皮膚の変化に気を付けましょう。
  7. 結び目が、できるだけ傷の真上に来ないようにしましょう。

(3)三角巾による包帯(1m四方の布を対角線に切った三角形の布)

三角巾は、骨折などで肩から腕をつるす場合、頭や関節部分への包帯をする場合など、傷の大きさにとらわれず体のどの部分にも使用できます。

(4)三角巾の使い方

三角巾は、広げたままの形や、包帯のようにたたんだ形で使用することができます。

三角巾を広げて使用するときは基底部を外側に3cm?5cm折り返して使用します。全部広げたときを全巾(ぜんきん)と言います。

また、三角巾を折りたたみ、傷の被覆、圧迫や固定などに使用する方法もあり、折り方によって、四つ折りたたみ三角巾や八つ折りたたみ三角巾があります。

ア.腕の固定
  1. つる腕と三角巾の底部の部分が並行になるようにし、つる腕の手を胸に当てる。
  2. 三角巾の下の部分を図のようにつるす腕を包んで折り曲げ、肩にかけ、肩の後ろで結ぶ。
  3. ひじにある三角巾の頂点は腕の長さに合わせて結び、内側に入れる。
  4. 三角巾が2枚ある場合は、もう1枚の三角巾で体に固定する。
  5. 指先は血液の循環を確認するために、覆わないで少し出しておくようにする。

腕の固定

イ.額の傷の場合
  1. 三角巾を8つにたたむ。

    額の傷の場合

  2. 三角巾の中央部分から10cmぐらい左(右)の部分を額の傷に当てる。
  3. 三角巾の両端を後ろに回し、交差させる。
  4. 三角巾をさらに前に回し、傷を避けて額のわきで結ぶ。

額の傷の場合

ウ.腕の傷の場合
  1. 三角巾を8つに折りたたみ、図のように三角巾1/3の部分を傷に斜めに当てる。
  2. ひじの方の三角巾を押さえ、手首からひじに向って重ねて巻き上げる。この時、重ねた部分が開いたりしないように、先に巻いた三角巾に1/2?1/3ぐらい重ねる。
  3. 傷を避けて、三角巾の両端を結ぶ。

腕の傷の場合

エ.足首の固定
  1. 三角巾を8つに折りたたみ、中央部を足の底に当て、両端の足首の後ろで交差させる。
  2. 三角巾の両端を前に回して交差させ、両端とかかとを斜めに巻いた三角巾の内側に通し、両端を足首の前方で引き締めて結ぶ。

足首の固定

オ.頭部の包帯
  1. 眉の上に三角巾の基底部を当て頭全体を覆うようにしながら、頂点を後頭部に垂らす。
  2. 三角巾の両側を握り、両耳の後ろで三角巾をたぐりながら、絞り込み、頭部にぴったり密着するようにする。

    頭部の包帯

    頭部の包帯

  3. 三角巾の両端を後頭部で交差させ、前に回し額で結び、頂点をたたみ込むようにして処理する。

    頭部の包帯

    頭部の包帯

    頭部の包帯

カ.頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯
  1. 八折りたたみ三角巾の中央部から10cm程度離れた部分を頭頂部に当て、適度に張りながら、端の長いほうをあごにかけ反対側に回す。

    頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯

    頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯

    頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯

  2. 両端を耳の上で交差させ、一端を額から反対側の耳の上へ、他方を頭の後ろに通して反対側の耳の上に回す。
  3. 両端を耳の上の三角巾上で結び、端末処理する。

    頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯

    頭部、ほほ部、下顎(かがく)部の包帯

キ.胸部の包帯
  1. 頂点を右(左)肩にかけ、三角巾の基底部を3cm?5cm折り、胸の下に当て、両端を背中に回す。
  2. 両端を背中の中央で縦結びに結び、頂点を持って胸に密着するように絞り込み、背中に回した頂点と結ぶ。

    胸部の包帯

    胸部の包帯

(5)雑誌等を使用した固定

副子(骨折の時に用いる添え木)として雑誌や段ボール、板等を使用して固定する方法があります。

副子は、骨折部の上下の関節が固定できる長さのものを準備します。

固定する順序は、骨折部の上・下・上・下の順で固定します。

雑誌等を使用した固定

4 救命処置

(1)救命の連鎖

心停止や窒息という生命の危機に陥った傷病者や、これらが切迫している傷病者を救命し、社会復帰に導くためには、1.心停止の予防 2.心停止の早期認識と通報3.早い心肺蘇生とAED 4.救急隊や病院での処置の4つが連続して行われることが必要です。これを「救命の連鎖」と呼びます。

傷病者の生命を救えるかどうかは、バイスタンダーの対応にかかっているということになります

救命の連鎖(チェーン・オブ・サバイバル)

救命の連鎖

救命の可能性と時間経過

救命の可能性と時間経過

「時間の経過により救命のチャンスは低下する」また「応急手当の実施が救命のチャンスを高める」ことが読み取れます。

応急手当の開始が遅れても、少しでも蘇生の可能性があれば、積極的な応急手当の実施が望まれます。

(2)心肺蘇生の手順

まず、まわりの様子が安全かどうか確認します。危険な場合は自分の安全を確保したうえで安全な場所に移動します。

1.反応を確認する

両肩をたたきながら、名前を呼んだり、「わかりますか」等と呼びかける。

呼んでも反応がなければ、大声で助けを求め、119番通報とAEDを持ってきてもらうようお願いする。

反応を確認

反応を確認

2.呼吸をみる

胸と腹部の動きを見て、「普段どおりの呼吸」をしているか、10秒以内で確認する。

呼吸をみる

3.胸骨圧迫を行う

普段どおりの呼吸が見られない場合、又はその判断に自信が持てない場合は、すぐに胸骨圧迫を30回行う。圧迫位置は、胸骨の下半分の位置(目安は、胸の真ん中)で、圧迫のテンポは1分間に100回?120回。

胸骨圧迫を行う
胸骨圧迫30回

胸骨圧迫を行う
胸骨に当てる位置

胸骨圧迫を行う

4.人工呼吸を行う

胸骨圧迫を30回続けたら、気道を確保して、人工呼吸を2回行う。胸骨圧迫と人工呼吸を2回繰り返して行う。

人工呼吸を行う
人工呼吸2回

人工呼吸

気道を確保して、約1秒かけて胸が上がるぐらいの量を、2回吹き込む。

※ 人工呼吸の方法を訓練していない場合、人工呼吸用マウスピースがない場合、血液や嘔吐物などにより感染危険がある場合は、人工呼吸を行わず、胸骨圧迫を続ける。

5.AEDが到着したら電源を入れる。(カバーを開けると自動的に電源が入るものもある)

AED

AED(自動体外式除細動器)とは?

心電図自動解析装置を内蔵した医療機器で、心電図を解析し除細動(電気ショック)が必要な不整脈を判断します。電気ショックにより、心臓が本来もっているリズムに回復させます。

AED

AEDの電源を入れるとメッセージが流れる。メッセージに従って操作する。

6.電極パッドを胸に貼る。

電極パッドを貼る位置は電極パッドに描かれた絵のとおりに、皮膚にしっかりと貼る。体が汗などで濡れていたら、タオル等で拭き取る。

AED

AED

おおよそ6歳ぐらいまでは、小児用電極パッドを貼る。小児用の電極パッドがなければ、成人用の電極パッドを代用する。
7.AEDのメッセージどおりにします。

電気ショックが必要かどうかをAEDが判断する。心電図解析中は、傷病者に触れない。

AED

8.ショックボタンを押す。

AEDから「ショックが必要です。」という音声があったら、誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押す。

誰も触っていないことを確認してから、ショックボタンを押す。

AED
ボタンが光る。

9.心肺蘇生の再開

電気ショックをしたあと、すぐに胸骨圧迫を再開する。2分たつと、AEDが再び電気ショックが必要かどうかを判断し、音声で指示するので、その指示に従う。救急隊に引き継ぐか、何らかの応答や目的あるしぐさが出現する又は普段どおりの呼吸を始めるまで続ける。

(3)小児(1歳以上16歳未満)に対する心肺蘇生

反応の確認から呼吸の確認までは成人の場合と同様です。

ア.心肺蘇生

胸骨圧迫と人工呼吸の比率は成人における手順と同様に30:2です。

イ.胸骨圧迫の位置、手順

胸骨圧迫は、胸骨の下半分の位置(目安は、胸の真ん中)で、成人における手順と同様です。

片手、又は両手で、十分な強さ、十分な速さで、絶え間なく圧迫します。圧迫は、胸の厚さの約1/3沈むまで押し下げ、1分間に100回?120回のテンポで行います。

ウ.人工呼吸

成人と同様、胸の上がりが見える程度の量を約1秒かけて静かに2回吹き込みます。

5 気道異物除去

食べ物を喉に詰まらせるなどの窒息の場合は、直ちに119番通報とAEDの搬送を誰かに依頼し、救助者は直ちに背部叩打法と腹部突き上げ法を試みます。

(1)反応がある場合

ア.背部叩打法

反応がある場合に、手の付け根(手掌基部)で左右の肩甲骨の間を強く、迅速に叩きます。

背部叩打法

イ.腹部突き上げ法

反応がある場合に、傷病者の上腹部を斜め上方に圧迫し、気道内の異物を除去する方法です。

救助者は傷病者の後ろに回り、ウエスト付近に手を回します。一方の手でへその位置を確認し、もう一方の手で握りこぶしを作って親指側を傷病者のへそとみぞおちの中間部に当てます。へそを確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向って圧迫するように突き上げます。

この方法は反応のない人、妊婦や乳児(1歳未満)に対しては行ってはいけません。

腹部突き上げ法

(2)反応がなくなった傷病者

傷病者の反応がない場合には、心肺蘇生の手順を開始します。救助者が一人の場合には、119番通報を行い、AEDが近くにあることが分かっている場合にはAEDを自分で取りにいってから心肺蘇生を開始します。

心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合には、それを取り除きます。異物を探すために心肺蘇生を中断することがないようにします。

6 脈拍

橈骨動脈(手首)又は総頸動脈(首すじ)などに、人差し指・中指の2本を当てて、規則性や回数などを観察します。脈拍数は、普通正常な成人では1分間に60?80回程度で年齢が低くなるほど回数が多くなります。

7 外傷の知識と手当

(1)傷口の手当

土や砂などで汚れた傷口をそのままにしておくと化膿したり、傷の治りに支障をきたす場合があります。傷口を水道水など清潔な流水で、十分に洗ってください。深い傷や汚れがひどい傷は、洗浄後すみやかに医師の診察を受けましょう。

(2)骨折、捻挫、打撲

手足が変形している場合には、骨折が疑われます。この場合は、変形した手足を動かさず、安静に保ちます。固定には、添え木や三角巾などを使用して、できるだけ動かさないようにしましょう。

捻挫や打撲に対しては、冷却パックなどで冷します。ただし、長時間の冷却は皮膚や神経をいためる原因となるので、20分以上続けて冷やすことは避けます。

(3)やけど(熱傷)と応急手当

やけど(熱傷)とは、炎や熱い金属、熱湯、化学薬品などが原因で、皮膚などが赤くなったり、水ほうなどができることです。

ア.熱傷の重症度

熱傷の重症度は、熱傷の深さ、面積、部位、年齢、受傷時の健康状態等の条件によって決定されます。

熱傷の深さ

I度熱傷 皮膚が赤くなり、少し腫れているもの。

II度熱傷 水ぶくれができたり、ただれているもの。

III度熱傷 皮膚が硬く黒く壊死(えし)しているもの、または白色に変色しているもの。

I度熱傷は、自然に治るので通常医療機関に行く必要はありません。

II度熱傷は、指先などの小さなもの以外は治療が必要です。

タオルなどで覆いきれないU度熱傷またはV度熱傷は、すぐに医療機関での診察が必要です。

イ.熱傷の応急手当

(ア)救命処置

気道熱傷が疑われるとき、意識障害、ショック症状がみられるときなどは、急激な症状悪化を予想し、傷病者から目を離さないようにします。

(イ)冷却

熱傷を受けた部位は、速やかに水道の流水で痛みが和らぐまで冷やして下さい。ただし、氷や氷水で長時間冷却することは避けるようにします。熱傷の範囲が広い場合、全体を冷却し続けると体温をひどく下げる可能性があるので、10分以上の冷却はしないようにします。冷却は水道水などの清潔な水で行います。

(ウ)被覆の処置

(熱傷の部位は感染防止に十分努め、できるだけ清潔に扱い、熱傷の部分を被覆します。

(エ)化学薬品による熱傷の手当

化学薬品が身体に付着したときは、速やかに水道水で洗い流します。この場合、ブラシなどでこすってはいけません。

【ポイント】

熱傷の手当として、次のようなことはよくありません。

  • 熱傷の部分に油、味噌などを塗ること。
  • 医師の治療を受ける前に、自分で薬剤を塗ること。

8 急病の知識と手当

(1)熱中症

熱中症は、長時間炎天下でスポーツ等をしていたことで発症する場合や、直射日光に当たっていなくても、室内で風通しが悪く湿度の高い場所にいたことで発症する場合があります。

<応急手当>
  1. 風通しの良い日陰や、冷房の効いている場所に移動する。
  2. 服をゆるめて、からだを楽にする。
  3. 冷たい水で冷やしたタオルを脇の下や足の付け根におき、体を冷やす。
  4. 自分で飲めるようなら、スポーツドリンクや薄い食塩水を飲ませる。ただし、意識障害などがあり、自分で飲めそうにない場合は無理に水分補給はしない。
  5. 意識状態がいつもと違ったり、暑いのに汗をかいていない、身体に熱がこもって高体温となっている場合などは、早めに医療機関で受診する。
【熱中症の予防】
  • 高温環境を避ける。多湿状態を避ける。
  • 直射日光を避ける。
  • 水分補給は計画的かつこまめに。
  • 暑さに身体を慣らしていく。
  • スポーツ実施時は、運動と休憩のメリハリを。

9 搬送法

救急車を呼んだ現場で、その場が安全で応急手当を行うのに支障がなければ、無理に移動や搬送をする必要はなく、その場で応急手当を行い、救急車を待つことになります。傷病者を移動させないことが原則となります。

しかし、傷病者がいる場所が危険な場合は、移動が可能であれば直ちに安全な場所への移動が必要であり、大きな地震が起きたときなど救急車が期待できないときには、協力して搬送しなければなりません。

(1)搬送の原則

  1. 傷病者を搬送する前に、まず必要な手当を行います。
  2. 傷病者に最も適した体位で搬送します(傷病者の希望する体位が原則です。)。
  3. 動揺を極力防止する方法で安静に搬送します。
  4. 搬送は安全に確実に行います。

(2)搬送の注意事項

  1. 搬送中も観察を継続します。
    搬送中も必ず傷病者の容態について観察を継続します(反応のある傷病者であれば、搬送中も「元気を出して」などと励ましの声を掛けつつ様子を見ます。)。
  2. より安全、確実な搬送方法を選択します。
    傷病者が揺れたり動いたりしないように注意します。また、傷病者の状態、搬送する人数や搬送用資器材の有無を考慮して、より安全で、確実な搬送方法を選択します。
  3. 搬送用資器材(担架)の使用が原則
    徒手による搬送(担架などの搬送用資器材を用いない搬送)は、傷病者にとって必ずしも楽な方法ではありません。ときには危険を伴う方法でもあります。狭い通路や階段などで搬送用資器材が活用できないときに限り、ごく近い距離の搬送に用います。
    ※ 原則として傷病者を直ちに搬送しなければならない理由がないときには、搬送用資器材が準備できるまで動かしません。

(3)応急担架によるケガ人の搬送

災害現場で担架がない場合は、身のまわりにあるもので、応急の担架を作り、ケガ人を搬送します。

【注意事項】
  1. けが人の足側を先にして担架が常に水平になるように運びます。
  2. 担架を持ち上げる時は、腰を落とし、腰を傷めないように持ち上げます。
  3. 長い距離を運ぶ時は、状況に応じて交代して持つようにします。
  4. 階段や坂道では、運ばれている人の頭が上側になるように搬送します。
◯ 毛布と棒を利用した場合

【使用資器材】丈夫な棒(2m×2本)、毛布(1枚)

【作成方法】

背部叩打法

◯ 衣服と棒を利用した場合
【使用資器材】
丈夫な棒(2m×2本)、上着
トレーナー等(5着以上)

衣服と棒を利用した場合

【作成方法】
  1. 上着のボタンはかけたまま、棒の両側から上着やトレーナーを通していきます。
  2. 少しずつ重ねて隙間なく並べます。
◯ 毛布を利用した場合
【使用資器材】
毛布、または、シーツ

毛布を利用した場合

【使用方法】
  1. 毛布を広げて置きます。
  2. 毛布の両端(縦方向)を中心に向かって固く巻き、中央部は傷病者を収容する幅だけ残します。
  3. 4人以上で、丸めた毛布の端を持って搬送します。

(4)徒手による(道具を使わない)ケガ人の搬送

【注意事項】
  1. 抱き上げ搬送 脊椎損傷、骨折のある人には適しません。
  2. 背負い搬送 骨折、腹部を負傷している人には適しません。

抱き上げ搬送

背負い搬送

2人での搬送

抱き上げ搬送

背負い搬送

2人での搬送

(5)椅子を使ったケガ人の搬送

【注意事項】

椅子を持ち上げる際は、腰を傷めないように、腰を十分に降ろし、背筋を伸ばして持ち上げます。

搬送者が椅子の左右に付く場合

搬送者が椅子の前後に付く場合

搬送者が椅子の左右に付く場合

搬送者が椅子の前後に付く場合

10 東京消防庁の救急行政

(1)増加する救急出場と救急隊の現場到着時間

東京消防庁における救急出場件数は、平成21年から増加し続けており、平成30年中の救急出場件数は818,062件と過去最高の件数となり、今後さらに増え続けると予想されます。

東京消防庁では、119番通報で救急車の要請を受けると、対応可能な最も近くの救急車を出場させていますが、救急要請が増加すると近くの救急車が全て出場中になり、遠くから救急車が駆け付けることで、到着までに時間がかかることになります。

このため、救急車が出場してから要請場所に到着するまでの時間は年々延びており、平成30年中の平均到着時間は7分02秒でした。

一方、救急車が搬送した方のうち、入院を必要としない軽症の割合は50%以上を占めており、また、アンケート調査の結果では、救急車を要請する理由として、「生命の危険があると思った」など、緊急性がある理由が多い反面、「交通手段がなかった」など緊急ではない理由も見受けられました。このような状況が進むと、救急車の到着が更に延び、救えるはずの命が救えなくなる危険性が高まります。

(2)PA連携

東京消防庁は、救命効果の向上を図るため、救命活動を必要とする救急事故及び高層建物、地下街、狭隘な場所等で発生した救急事故から早期に傷病者を医療機関へ搬送することを目的として、救急隊と同時にポンプ小隊を出場させ、マンパワーを確保した効率的な救護活動を行う、ファイア・クイック・エイド(ポンプ小隊等による迅速な救出・救護活動=PA連携)を平成12年4月1日から開始しました。平成30年中の出場件数は153,612件となっています。

次の場合に、救急現場にポンプ隊が出場します。

  1. 通報の内容から傷病者が重症以上で直ちに傷病者の救出・救護が必要であると判断した場合
  2. 救急隊のみでは傷病者の搬送が困難となることが認められる場合
  3. 傷害事件等で傷病者及び救急隊員を保護する必要が認められる場合
  4. 円滑な救急活動に支障が生じる恐れがある繁華街等で、消防署長が指定する地域及び時間帯に救急出場があった場合
  5. 署所の直近地域で救急事象が発生し、直ちに傷病者の救出・救護が必要であると判断した場合
  6. 救急隊の現場到着が大幅に遅延すると予想され、直ちに傷病者の救出・救護が必要であると判断した場合

(3)あなたは本当に救急患者ですか?

救えるはずの命を救うためには、一刻も早い「応急手当」と「医療機関での治療」が重要です。そのため、救急車を呼ぶと、救急車を必要とする場所に最も近い救急車が駆けつけます。

しかし、「救急車で行けば病院で待たずに受診できる」、「病院までの交通手段がない」など、緊急性のない救急車の利用が増えると、本来、近くから駆け付けるはずの救急車がいなくなってしまいます。

救急車は、救えるはずの命を救うためにみなさんが共有する貴重な財産です。真に救急車を必要とする人のために、救急車の適正な利用を心がけましょう。

(4)救急搬送トリアージについて

救急車の出場件数の増大や緊急性のない救急要請などの状況から、東京消防庁では、増大する救急需要対策の一環として出場した救急隊の容態観察により、緊急性が認められないと判断した方には、同意を得て自らの受診をお願いする「救急搬送トリアージ」を実施しています。救急隊が緊急性の高い傷病者に対して、迅速かつ的確に対応していくために、ご理解とご協力をお願いしています。

救急搬送トリアージ

救急搬送トリアージ

こんな場合は、救急搬送トリアージの対象となる可能性があります。
  • 手や足の切り傷、擦り傷
  • 手や足のやけど
  • 耳や鼻の異物
  • 鼻出血
  • 皮膚の発赤、かゆみ
  • 眠れない、不安、さみしい

手

鼻出血
鼻出血

やけど
やけど

(5)「#7119」東京消防庁救急相談センターと東京版救急受診ガイド

急な病気やケガをした場合に、「今すぐ病院に行ったほうがいいのかな?」、「救急車を呼んだほうがいいのかな?」など迷った際の相談窓口として、救急相談センターを開設しています。

また、この救急相談センターでの電話による救急相談に加え、東京版救急受診ガイド(冊子版・ウェブ版)も提供しています。

これは、自分の症状に応じた質問に答えることで、病気やケガの緊急性の有無や受診科目を自己判断できるサービスです。
※緊急性があると思われる場合は、ためらわず救急車(119番)を呼びましょう。

東京消防庁救急相談センター

救急受信ガイド

(6)患者等搬送事業者(民間救急)の搬送サービスの利用について

病院から他の病院への転院搬送や入院、退院、通院などの際に寝台や車椅子で移動が必要なときは、東京民間救急コールセンターにお問い合わせください。

東京民間救急コールセンターでは、最寄りの民間患者搬送サービス(患者等搬送用自動車・サポートCab)をご案内しています。搬送費用は有料となります。

東京民間救急コールセンター

11 救命講習を受講しよう

(1)バイスタンダーによるAEDの効果

平成16年から医療従事者以外の方によるAED(自動体外式除細動器)の使用が認められ、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)によるAEDの使用事案も年々増加の傾向にあります。平成30年中にはバイスタンダーがAEDを使用した255人の傷病者のうち、160名(62.7%)の方々が病院に到着する前に心拍が再開しました。

しかし、現在、応急手当の実施率は、約4割程度で、応急手当がもっと多く実施されれば、より多くの命を救うことができると考えられます。

AEDは現在、駅、空港や区・市役所、デパートや学校に至るまで、様々な場所への設置が進んでいます。必要になった場合に慌てることのないよう、日頃から身近に設置されているAEDの位置や種類を確認しておき、いざというときに、尊い命を救えるように訓練しましょう。

(2)バイスタンダーの奏功事例

実際にバイスタンダーが応急手当を行い、尊い命を救った事例を紹介します。

命を救った事例1

38歳の男性。河川敷でサッカーの試合中にゴールキーパーをしていて、約2mの至近距離から放たれたシュートを胸に受け、数歩歩いたあとに倒れました。その後、痙攣が起き、呼びかけに反応しないため、チームメイトが救急要請を行いました。騒ぎに気付いた通行人(上級救命講習修了者)が、河川敷に設置されていたAEDを搬送し、普段どおりの呼吸がなかったため、チームメイトに胸骨圧迫を指導しながらAEDを装着しました。AEDを装着すると除細動のメッセージがあり、音声ガイドに従い除細動を1回実施しました。その後、心肺蘇生を継続し、消防隊到着時には呼吸と脈拍が回復、救急隊が到着したころには、意識が完全に回復していました。

命を救った事例2

10歳の男児がプールでの授業中に、クロールで25m泳ぎきったところで、急に動きが止まり様子がおかしくなりました。教師がすぐに近付き様子を見ると、白目をむき呼びかけに反応がなく、呼吸が喘ぐようになったため、普段どおりの呼吸をしていないと判断し、救急要請を他の教師に依頼するとともに胸骨圧迫を開始しました。その後、プールサイドに準備してあったAEDを装着すると、除細動のメッセージがあり、音声ガイドに従い除細動を1回実施しました。その後、心肺蘇生を継続し、消防隊到着時には呼吸と脈拍が回復、救急隊が到着したころには、意識が完全に回復していました。

(3)主な救命講習の種別

消防少年団の年代別指導カリキュラムでは、ジュニア団員は救命入門コース、リーダー団員は普通救命講習、高校生団員は上級救命講習と段階的に救急の知識と技術を身に付けることを推奨しています。各講習で身に付けた知識と技術は家族のために、また、バイスタンダーとして、いつ必要になるか誰にもわかりません。いざというときに自信を持って尊い命を救えるように、繰り返し救命講習を受講しましょう。

講習の種別 講習内容
救命入門コース
(45分)(90分)
3時間の普通救命講習の受講が困難な都民及び小学校高学年を対象にした、胸骨圧迫とAEDの使用方法を中心に学ぶコース
普通救命講習
(3時間)
心肺蘇生、AEDの使用方法、窒息の手当て、止血の方法などを学ぶコース
普通救命再講習
(2時間20分)
前回の普通救命受講日から3年以内に再度受講するためのコース
上級救命講習
(8時間)
AEDを含む救命手当のほかに、小児・乳児の心肺蘇生、ケガの手当や搬送方法などを学ぶコース
上級救命再講習
(3時間)
前回の上級救命受講日から3年以内に再度受講するためのコース
応急手当普及員講習
(24時間)
普通救命講習の指導要領を学ぶためのコース
応急手当普及員再講習
(3時間)
前回の応急手当普及員講習受講日から3年以内に再度受講するためのコース

応急手当指導中


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