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東京消防庁

東京消防庁 > 安全・安心情報 > 事業所向けアドバイス > 自衛消防活動の事例 > 事例詳細

高層建築物で発生した火災において、
防災センター勤務員を中心に
一連の自衛消防活動を迅速、的確に行い、
延焼拡大を防いだ事例

用途等 複合用途(16項ロ) 地上20階地下2階 出火場所 14階バルコニー
焼損程度 建物部分焼 出火時間帯
けが人等 なし
出火原因 不明
自衛消防活動の状況※
発見
現場駆付け 
18階の事業所の従業員から、「18階の喫煙所が煙っている」と1階の防災センターへ連絡があった。
 連絡を受けた防災センター勤務の警備員Aは、確認のため警備員Bを18階に向かわせた。
 その後、各階の従業員から防災センターへ「15階の喫煙所が煙臭い。」、「14階の喫煙所から火が見える。」などの連絡があったため、警備員Aは警備員Bに無線で連絡し、「14階に向かえ。」と命令した。
 さらに、警備員Aは、地下1階で待機中であった警備員Cと警備員Dとに無線で連絡し、14階の確認に向かわせた。
 その後、防災センターの自動火災報知設備の受信機が「15階注意報」を表示した。
 14階に到着した警備員Cは、廊下の屋外バルコニーに設置されているエアコン室外機付近から炎が出て、延焼しているのを発見した。
 警備員Cは炎を確認後、防災センターにいる警備員Aに、無線により火災発生を連絡した。
 その直後に自動火災報知設備の受信機が「14階注意報」を、さらに1分後に「14階火災報」を表示した。
通報 火災発生の連絡を受けた警備員Aが、防災センターの固定電話により119番通報した。
初期消火 警備員Cは、エアコン室外機から立ち上る炎の高さから、消火器による初期消火は不能であり、消火用散水栓による消火が必要だと判断した。
 まず、煙の流入を防止するため、火点直近の廊下に設置された防火戸を閉鎖し、一緒にいた施設担当Eに、屋外バルコニーへ出るガラス戸の鍵を開錠させるとともに、火点西側の消火用散水栓からホースを延長した。
 14階に到着した警備員Dは、消火用散水栓の筒先を保持している警備員Cを確認し、消火用散水栓のバルブ操作が必要であると判断し、消火用散水栓のバルブを開放した。
 警備員Cと施設担当Eが消火用散水栓による消火活動を継続し、炎がおさまりつつある状況で消防隊が到着したため、消火活動を消防隊に引き継ぎ、警備員Cと施設担当Eは避難した。
避難誘導 消火用散水栓のバルブ操作を終えた警備員Dは、14階に残っていた40〜50人の在館者を、警備員Bや警備員Fとともに避難誘導した。
 その後、警備員Bと警備員Fは15階に残っていた20〜25人の在館者を避難誘導した。
 警備員Gは、16〜20階に残っていた在館者を避難誘導した。
 屋上も確認したが避難者はいなかった。
 その後、14、15階については、防災センター勤務の警備員による巡回を20分ごとに行い、逃げ遅れ者や戻ってきた者がいないことを確認した。
 防災センターでは、警備員Aが、14階から上階の階に対して、避難誘導放送を実施した。
 4階の事業所の従業員から防災センターに「避難すべきか」の問合せがあったため、避難について協力を依頼した。(火災の状況から、自衛消防隊長の判断として、全館避難指示(13階以下の階の避難指示)は出ていなかったので、下階に対しての非常放送等を活用した積極的な避難指示はしなかったが、問合せがあった事業所に対しては、安全側を取って避難するよう協力を依頼した。)
防火管理上の問題点
  • 1 各階の事業所(地区隊)から「炎が見える」という連絡が複数防災センター(本部隊)になされていたにもかかわらず、その時点ですぐに通報せず、本部隊により現場確認し、自動火災報知設備の受信機が火災表示した後に119番通報を行いました。
  • 2 本部隊のみが活動し、地区隊による自衛消防活動が行われませんでした。
  • 3 14階火点付近において、避難せずにいた従業員が存在しました。
防火管理上の推奨点
  • 1 炎が天井まで到達していたため、消火器による消火は困難だと冷静に判断し、消火用散水栓による初期消火への移行を早期に決断して活動を行い、炎がおさまった状態で消防隊に引き継ぎました。
  • 2 14階以上の事業所には避難指示(放送設備による放送)、13階以下の事業所は基本的には現状待機として問合せ(電話)があった場合にのみ避難の協力を依頼するなど、臨機応変に段階的な避難に配慮し、多数の在館者を混乱させることなく、迅速・的確に避難誘導しました。
  • 3 避難してきた人が建物内に戻らないように、また、外部から建物内に人が入らないように、出入口に避難誘導班員を配置して人員管理を行いました。
  • 4 早期に手動で防火戸を閉鎖し、煙が屋内に流入しない措置をとりました。
  • 5 避難状況・逃げ遅れ者の確認状況を逐一リアルタイムで防災センターで把握していました。
  • 6 地区隊との活動連携はなかったものの、本部隊を中心に、消防計画に基づき、迅速・的確な自衛消防活動を行い、被害を最小限にとどめました。
  • 7 発災時防火管理者は不在でしたが、防災センターの自衛消防隊長がリーダーシップを発揮し、的確な指示を行い、組織的な対応が滞りなく行われました。
防火管理上のポイント

1 初期消火や避難誘導を行うタイミングの目安としては、下表のとおりです。

(1) 初期消火

消火設備等の種別 消火活動の目安

消火器

水バケツ等

  • ・退路を確保した上で、天井に火が移るまでを目安に消火を行う。
  • ・火災発見時に炎が天井に達している場合や出火室内が延焼拡大中の場合は、消火はせずに避難する。

屋内消火栓設備

消火用散水栓

・退路を確保した上で、操作者が危険のない範囲で消火を行う。

(2) 避難誘導

出火階
2階以上(避難階を除く。) 1階(避難階)、地階
火災状況 ・火災と判明した時点 出火階・直上階 出火階・直上階・地階
・消火器で消火不能
・屋内消火栓で消火中
出火階以上の上層階 全館
・屋内消火栓で消火不能 全館  
  • 2 出火階の防火戸及び防火シャッターは、他の階に優先して閉鎖してください。この場合、直近の防火区画、たて穴区画を優先して区画してください。
    なお、自動閉鎖式の防火戸や防火シャッターであっても、自動閉鎖を待つことなく手動で閉鎖してください。
  • 3 防災センターは自衛消防隊の指令本部です。
    災害に係る情報を集積させて推移を把握し、防災センター長は適時適切な指示を出し、地区隊と連携して効果的な自衛消防活動を行ってください。
  • 4 防火管理者の皆さんは、自己の在・不在にかかわらず、従業員が常に消防計画に基づいた通報、消火、避難誘導等の活動を適切に行えるように、防火・防災教育や自衛消防訓練を定期的に実施し、災害発生時の対応に関する知識や技術の維持及び向上に努めてください。
    特に自衛消防隊長は、組織的に災害へ対応できるよう隊員等に具体的な指示、命令をし、自衛消防隊を統率する重要な役割を担っていることを十分認識してください。

※自衛消防活動の状況は、関係者からの聞き取りによるものです。




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