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東京消防庁

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複合用途の建物の保育施設の火災において、
職員8名で乳幼児33名を無事に避難させた事例

用途等 複合用途(16項イ) 地上4階 出火場所 1階 調理室
焼損程度 建物ぼや 出火時間帯
けが人等 なし
出火原因 業務用電磁(IH)調理器の電源スイッチを入れたまま放置しその場を離れたため、時間の経過とともに鍋の中の天ぷら油が過熱され、出火したもの
自衛消防活動の状況※
発見 栄養士Aは、かぼちゃ団子の調理をするために、天ぷら油の入ったIHこんろ鍋を業務用電磁調理器で加熱したままその場を離れ、調理室前の保育室で栄養日誌を記入していた。
 しばらくして、調理室から焦げた臭いがしたのでおかしいと思い、調理室のドアを開けたところ、電磁調理器で加熱中のIHこんろ鍋から換気扇のあたりまで炎が立ち上がっているのを発見した。
通報 栄養士Aは、大声で火災の発生を保育園内に知らせ、他の職員7名とともに園児33名を保育園の屋外テラスに避難誘導したあと、保育室の固定電話で119番通報した。
初期消火 保育室で園児の午睡の見守りをしていた保育士Bは、栄養士Aの火災を知らせる声を聞いて調理室に駆け付け、調理室入口に設置していた粉末消火器1本を使用し初期消火したが消えなかったため、別の消火器を取りに職員室に行った。
 調理室に戻り、2本目の粉末消火器を使用して初期消火を行ったところ炎が収まった。
 保育士Bは、炎の収まっている間に、電磁調理器の電源スイッチを切り、換気扇を止めてから調理室のドアを閉め、ドアの小窓越しに内部を確認したが、再びIHこんろ鍋から炎が立ち上がっているのを見た。
 その後、保育士Cは、自動火災報知設備の鳴動音で駆け付けた建物管理会社社員Dが建物駐車場から持ってきた強化液消火器1本を借用して消火を継続したところ、炎が収まったので、園長Eの指示で屋外に避難した。
避難誘導 火災発生時、園内にいた7名の職員(B、C、E〜I)は、火災を発見した栄養士Aとともに、計8名で保育室の園児0歳〜6歳までの33名を保育園屋外のテラスに避難誘導した。
 園児を避難誘導した後、栄養士Aは保育室に戻り、固定電話を使って119番通報し、通報後に屋外に自主避難した。
 強化液消火器を使用して消火活動を行った保育士Cは、初期消火成功後に園長の指示で屋外に避難した。
 建物内の他の事業所(共同住宅及び飲食店など)には、自動火災報知設備の鳴動以外に、火災の発生を伝える呼び掛け等の連絡は行っておらず、一部の者のみが避難するにとどまった。
防火管理上の問題点
  • 1 業務用電磁調理器の機能を把握しておらず、過熱状態のままその場を離れてしまったこと。
  • 2 建物内の他事業所への連絡体制がとれていなかったこと。
防火管理上の推奨点
  • 1 消火活動を迅速に行い、延焼拡大を防いだこと。
  • 2 午睡時間だった乳幼児を、けがなく屋外に迅速に避難させたこと。
防火管理上のポイント
  • 1 防火管理者は、従業員に対して、常に消防計画に定められた自衛消防活動が行えるように、その内容を周知徹底するため、防火・防災教育や自衛消防訓練を定期的に実施し、従業員等の防火管理業務に関する知識や技術の維持及び向上に努めてください。
  • 2 防火管理者は、従業員に対して、食用油を使用し調理する際には、加熱後わずかな時間で過熱し発火に至ることがあること、また、油の量や故障等の要因で過熱防止装置が作動しない場合があることを教育し、火気使用中は「その場を離れない」「その場を離れる場合は必ず火を消す」という基本的な原則を遵守させてください。
    なお、電磁調理器には過熱防止機能等の安全機能が付いていますが、使用方法によっては火災の原因となり得る可能性があることを認識し、使用には十分に注意を払うことが重要です。
  • 3 複数の管理権原者がいる建物では、災害時に建物全体で協力、連携して一体的な自衛消防活動を行うことができるよう事前に協議し、火災が発生した場合の他事業所への連絡、避難方法等について具体的に消防計画に定めてください。
  • 4 複数の管理権原者がいる建物では、災害時の事業所間のスムーズな連絡や、各事業所が協力した一体的な自衛消防活動を行うため、日頃から意思疎通を図るとともに、定期的に建物全体で自衛消防訓練を実施することが効果的です。
  • 5 乳幼児がいる施設では、災害時の自力避難困難性を踏まえ、発災時間やスタッフの人数等、条件が違う場合に応じて、災害時にどのように対応するのか、事前に綿密な計画を定めておくことが大切です。

※自衛消防活動の状況は、関係者からの聞き取りによるものです。




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