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東京消防庁ライブラリー消防雑学辞典

このページは、新 消防雑学事典 二訂版(平成13年2月28日(財)東京連合防火協会発行)を引用しています。
最新の情報ではありませんので、あらかじめご了承ください。


消防雑学事典
?二つの消防庁

mark 「東京消防庁」、「総務省消防庁」どちらにも「消防庁」という文字が付いているので、同一機関、もしくは同一機関の別名では、と思っている人も多いようです。 そこで、その違いを紹介します。

東京消防庁は、東京都の行政機関であり、総務省消防庁は、の行政機関です。
「庁」という名称は、国家行政組織法に基づき、行政組織上、国の行政機関に付けられるものです。ですから、「消防庁」は、総務省の外局である「総務省消防庁」を指すのです。
一方、戦後GHQ(連合軍総司令部)の指導により、自治体消防の一つである東京消防庁にも、「庁」という官庁名が付けられました。
双方の消防機関とも「庁」が付いており、東京に所在することから、混同されているようです。 総務省の外局である「消防庁」が誕生したのは、消防の基本法である消防組織法が施行となった昭和23(1948)年3月7日で、当時は、「国家消防庁」と称して、国家公安委員会のもとに置かれていました。

しかし、国家公安委員会は、総理府の外局であったため、国家消防庁は、国家行政組織法上の外局とはいえず、「庁」の名称を用いることは適当ではないとの意見もあり、また、行政組織の簡素化の一環として、昭和27(1952)年7月1日、「国家消防本部」と改められました。

その後、昭和35(1960)年7月1日、自治庁が自治省(現 総務省)に昇格したとき、「国家消防本部」は、自治省の外局となり、「消防庁」と改められました。
総務省消防庁が行う事務は、消防組織法第4条に、消防に関する市街地の等級化、などが定められています。
また、同法第6条には、「市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果すべき責任を有する」と定められており、現在の消防が、自治体消防制度であるのは、この条文が根拠となっています。  
旧内務省庁舎(この中に自治省消防庁があった)


さて、東京消防庁は昭和23年3月7日、自治体消防として警視庁から分離独立して、「東京消防本部」として誕生し、約2か月後の同年5月1日には、「東京消防庁」と名称が変わりました。

この名称変更に際しては昭和23年4月9日、GHQ(連合軍総司令部)の関係者と、東京都・警視庁・東京消防本部の関係者が参加して、「東京消防本部の名称変更に関する会議」が開催されました。
会議に先だちGHQの関係者から、名称改正の必要性について、次の事項が示されました。

@警察と消防とは同格であり、重要性も同一である。
A警察と消防は歩調をそろえるべきである。
B日本における警察と消防の地位および待遇、その他すべて同一でなければならない。

東京消防庁 GHQ側が示したこれらの事項に基づき、名称等の改正を実施した場合、各関係機関やその他の関連において、何か問題が生ずるか否かを中心に、懇談会形式で会議が進められ、それぞれの立場から意見が出されました。
GHQ側は、名称改正が必要であるという発言(意向)は、個人的意見ではなく、GHQとしての発言である旨を補足し、消防の組織およびその長の名称は、警察と同一にすることが民主的であると強調しました。
これに対して一部から反論が出ましたが、それらはいずれも、従来からのわが国の慣習的な思考の枠内に偏った傾向があり、GHQの関係者を説得するに至りませんでした。


このことから最終的には、GHQが示した考え方によって、東京都が再度自主的に、この意向をくんだ方向で検討し、解決する旨を約束して会議は終了しました。

この会議におけるGHQの強い意向が直接の引き金となって、新発足から2か月後の昭和23年5月1日に、「東京消防本部等の設置に関する条例」は、「東京消防庁の設置等に関する条例」と改正され、第2条に「消防の名称は、東京消防庁という」と、また第7条に「消防長は、これを消防総監と称する」と規定され、東京消防本部は東京消防庁と、消防本部長は消防総監と改称されました。

以上のことに基づいて、二つの消防庁が存在することになりました。



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