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東京消防庁ライブラリー消防雑学辞典

このページは、新 消防雑学事典 二訂版(平成13年2月28日(財)東京連合防火協会発行)を引用しています。
最新の情報ではありませんので、あらかじめご了承ください。


消防雑学事典
消火に使った水道料は?

あなたの職業は?と聞かれると「水商売」と答える冗談のキツイ消防職員もいるように、消防と水は切っても切れない縁があります。
消火用に水が多く使われるのは気化熱が高いこと(水1グラムが1気圧のもとで水蒸気になるのに539カロリーもの熱量を必要とする)、安価で豊富に得られること、使用方法が比較的簡単であることなどが主な理由として挙げられます。

消火栓使用の図(明治30年代)
消火栓使用の図(明治30年代)
消防水利の種類には、消火栓、防火水槽、プールなどの人工水利と、河川、池、湖、沼、海などの自然水利があり、水道管を流れる水のように圧力を持った有圧水利と、防火水槽の水のように無圧水利に分けることができます。

有圧水利は、消防用として利用するにはそれほど問題はありませんが、無圧水利は物理的にいろいろな制限を受け、動力ポンプを用いて吸水しなければなりません。

一気圧のもとで完全真空ができれば、理論上の吸水高は10.33メートルですが、液体の密度や土地の高さ、管路の流水抵抗、さらに真空ポンプの性能などの影響を受けて、実際上の最大可能吸水高は8〜8.5メートル前後になってしまい、しかも、水温も吸水高に影響を与えます。

温度が上昇すると水面から蒸気が発生し、蒸気圧を上げることになります。
この蒸気圧が大気圧とは逆の作用をするため、実際上は、摂氏60度くらいが吸水可能水温の限界になります。
また、海水は真水と比べて、吸水にどのような影響を与えるかを見てみますと、海水の比重は1.025で、真水に比べると2.5パーセント分だけ吸水能力が減少します。

現在東京では、人工水利のうちおよそ80パーセントを消火栓が占めています。
東京における水道の歴史は、明治23(1890)年2月、全国各市町村における水道の普及等を目的として「水道条例(法律)」が制定され、これをもとに、東京市においては、明治25(1892)年12月に改良水道敷設工事(江戸時代の上水は、原水をそのまま吸水していたのに対して、明治時代の水道は、原水をろ過して吸水し、江戸時代の木管にかえて、鉄管の水道管を使用するようになったため、改良水道と呼ばれた)に着手したことに始まります。

この工事と並行して消火栓の設置工事が行われ、明治31(1898)年11月に初めて消火栓が誕生しました。
消火栓が設置された根拠は、次のような条文です。

  • 水道条例(明治23年2月12日法律第9号)
    第16条 市町村ハ消防ノ為メニ消火栓ヲ設置スヘシ、消防用ニ消費シタル水ハ水料ヲ徴収スヘカラス
  • 東京市上水設計(明治23年7月3日東京府告示第50号)
    消火栓ハ平均四百五十尺(136メートル)ノ距離ニ之ヲ設置スルノ割合ニシテ、合計四千百五十個トスル

消火栓の設置と並行して蒸気ポンプの国産化が進んだことにより、明治後期に至ると、それまで数多く発生していた大火が、減少していきました。
わが国で初めて消火栓を設置したのは、明治20(1887)年10月に水道敷設工事が完成した横浜市であるといわれています。

左:防火水槽の模型 右:耐震性貯水槽の模型
左:防火水槽の模型 右:耐震性貯水槽の模型

火災現場で使用した水道料金は、どのようになっているかといいますと、前に記した「水道条例」第16条を母体とした、現「水道法」第24条で、「水道事業者は当該水道に公共の消防のための消火せんを設置しなければならない」、「水道事業者は、公共の消防用として使用された水の料金を徴収することができない」と定めています。

しかし、東京を例にとりますと、地方公営企業法第17条の2などの法令に基づいて、火災現場等で使用した水道料金は、東京消防庁が水道局に支払っています。

現在東京消防庁では、耐震性防火水槽(貯水槽)やビルの基礎ばりを利用した地中ばり水槽の設置、巨大水利(河川、海、プールなどで1,500立方メートル以上の水量のあるもの)の確保につとめ、地震時の火災に備えています。




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