第16章 応用科目
この章の趣旨
- 「基本科目」を踏まえつつ、団としての一体感や(仲間意識、協調性)、団体活動の楽しさ、バランスの取れた情緒豊かな人間性の醸成を目指す。
応用科目 | 指導内容 | 達成目標 |
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総合学習 |
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キッズ団員用カリキュラム
集団での体験学習を通じて
集団での体験学習を通じて
集団での体験学習を通じて
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施設見学 |
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社会奉仕 |
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行事参加 |
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その他 |
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1 応用科目の特徴と留意事項
(1)特徴
消防少年団の年代別指導カリキュラムには大きく分けて、規律訓練、通報、消火、救急等の「基本科目」と総合学習、社会奉仕、施設見学、行事参加等の「応用科目」に分かれています。「基本科目」は、主に個々の団員の消防少年団員として必要な防災に関する基礎的知識・技能の習得をねらいとしています。「応用科目」は消防に関する知識・技能ばかりではなく、「基本科目」を踏まえつつ、活動を通して、団としての一体感や(仲間意識、協調性)、団体活動の楽しさ、バランスの取れた情緒豊かな人間性の醸成をねらいとしています。
したがって、応用科目は内容が地域行事等への参加、社会への奉仕、防災教育施設の見学など極めて多面に渡ることが考えられます。
(2)留意事項
応用科目を実施する上での共通する留意点として、次のことが挙げられます。
- 集団での体験学習を通して、基本科目での知識・技能を確認し、高めるよう配意する。(行動力に自信を持たせる)
- 団員の年齢(学齢)、体力を考慮する。
- 団員相互の話し合いを通じて得た考えを出来るかぎり尊重し、他人や社会との触れ合いの機会を積極的に持たせる。(自主性、協調性の育成)
- 高校生団員やリーダー団員がキッズ・ジュニア団員に対して指導ができ、模範となるよう配慮する。(仲間意識、年長者の自覚)
- 興味や勝敗のみに囚われないように配慮する。
- 活動場所が広範、多様に及ぶので事前調査、準備、活動の展開の予測、指導者の任務分担と配置に十分配慮する。
2 総合学習
総合学習の主な活動の具体例としては、火災予防パトロール、野外キャンプ(防災キャンプ)等があります。団員自身が自分の知識・技能を試し、自分の行動力に自信を持たせるとともに、消防少年団員としての自覚や仲間意識を強め、協調性や自主性等を育成することを目的とします。
(1)火災予防パトロール、広報活動
火災予防運動や防災週間などの行事、火災多発期や年末年始などに、防火パトロールや街頭での広報活動を行います。
家庭や地域社会に防火防災思想を普及させるとともに、消防少年団活動を地域の方々にPRすることが目的です。
留意事項
- 予め広報文の原稿を作成しておきます。
- 広報文は短く、スポット的な文章とします。
- 柔らかみのある口調で、しかも説得力を失わない表現とします。
検討事項
- 実施場所
- 班編成はどうするか
- チラシを配布するか
- 広報文
広報文例
- 『こちらは、○○消防少年団です。ただいま、放火火災防止パトロールを行っています。最近、放火による火災が多く発生しています。家の周りの整理整頓をお願いします。ごみは、決められた日の朝に出しましょう。』
- 『こちらは、○○消防少年団です。ただいま、秋の火災予防運動が行われています。火災は、ちょっとした油断から起きています。火の元には十分気をつけましょう。「(その年度の防火標語)」』

(2)野外キャンプ
基本科目で習得した知識と技術を確認し、実践で役立つものにするため、野外での防災キャンプを実施する方法もあります。
実施例
- 火の大切さ、燃焼と消火の理論……火起こし体験
- 救助……川での水難救助法
- 震災後の避難生活を想定した野外炊飯

留意事項
防災キャンプ等を野外で行う場合には、より一層の安全管理を行い、事故やけがなどがないよう、活動をすることが重要です。
- 下見や話し合いを行い、十分な事前準備をする。
- 参加者の健康状態を把握する。また、事前にアレルギーや持病など配慮が必要な事柄について把握する。
- 食中毒などに配慮をする。
- 天候を把握し、危険と判断した場合は活動内容の変更や中止について判断する。
- 事故等が発生した場合の対応や連絡体制について、事前に検討し、迅速に対応できるようにしておく。
3 社会奉仕活動とは
「奉仕活動」という用語をめぐっては様々な議論がありますが、ここでは、社会奉仕活動よりも広義に解釈したボランティア活動として取り扱うこととします。
ボランティア活動とは、自発的に、他者や社会のために、金銭的な利益を第一に求めない活動のことです。また、誰もが暮らしやすい豊かな社会を目指して、さまざまな人や団体とつながり、ネットワークをつくりながら、社会の課題の解決に取り組む活動です。
その基本的な考え方として、次のことが言われています。
- 自分から進んで行動する……「自主性・主体性」
- 共に支え合い、学び合う……「社会性・連帯性」
- 見返りを求めない……「無償性・無給性」
- よりよい社会をつくる……「創造性・開拓性・先駆性」
このような活動を通じて、他人に共感すること、自分が大切な存在であること、社会の一員であることを実感し、思いやりの心や規範意識を育むことができます。
(1)消防少年団とボランティア活動の目的
消防少年団がボランティア活動を行う場合、「地域に奉仕する精神を育む」といった団の目的に沿って、活動を進めます。
団活動としてのボランティア活動には、次のような意義があります。
- 協力・助け合う関係を知り、育む
- 地域に貢献する
- ボランティア活動のありかたを体験する
(2)活動時の留意事項
活動の対象によっては、さまざまな配慮が必要となります。福祉関係のボランティア活動を例にとれば、活動の対象が児童や障害者、高齢者などの場合、活動をする上で、働きかけの仕方や安全面などへの配慮が必要となります。
消防少年団活動としてボランティア活動を行う場合には、次のようなことに留意しましょう。
- 相手側(または相手側関係者)と事前に十分連絡をとり、相手側の意向、活動を展開する場所の状況などを正しく把握する。
- 団員に対してボランティア活動の目的、内容等を事前に説明し、理解させておく。
- ボランティア精神を忘れず、相手側の誇りを傷つけないよう配慮する。
- 消防少年団として規律ある態度で臨む。
- 他の団体と合同で実施する場合は、特に時間を厳守し、協調性に配意する。
- 言葉遣い、服装、マナーに留意する。
- 事前に使用資器材を準備し、使用方法を習熟しておく。
- 会場への移動手段に配意する。
- 安全管理・事故防止に配意する。
(3)消防少年団のボランティア活動例
社会福祉施設等の訪問
計画の立て方
- 訪問する施設を選定する。
- 施設の関係者と事前に打ち合わせをする。
- 訪問の目的、内容を説明し理解と協力を得る。
- 実施日、時間を設定する。
- 準備品を確認する。
- 任務を分担する。
活動の展開
- 指導者及び団員が施設を訪問する。
- 歓談
- 出し物の披露
- 自分たちで作った品物をプレゼント
- チラシ等の配布
- 施設関係者に防火防災を呼びかける。
留意事項
- 訪問する施設等の状況に配意した、訪問者数、日時等を選定する。
- 相手の誇りを傷つけることのないように、心遣い、気配りに配意する。
- 正月、防災の日、敬老の日、火災予防運動期間等、時期をとらえた訪問日の選定に配意すること。

環境美化運動等への参加
計画の立て方
- 実施場所を選定する。
- 駅前、河川敷、山、神社、街頭など
- 実施時期及び時間を設定する。
- 実施場所の管理者と事前に打ち合わせをする。
- 準備品を確認する。
- ほうき、ちりとり、軍手、タスキ、ごみ袋など
- 任務を分担する。
活動の展開
- ごみ拾い、清掃等の実施
- タバコの投げ捨て防止等のちらし配布
- 火災予防と美化運動の呼びかけ
留意事項
- 他の団体等と一緒に実施する場合は、連絡を密にして実施する。
- 実施場所によっては、関係機関へ届け出が必要となる場合があるので事前にチェックする。
- 安全管理(複数で活動、手袋や帽子などを着用しケガや熱中症等の事故防止等)に配意する。

4 行事参加
(1)行事参加の意義
消防少年団の参加する行事には、次のように、団の内部行事的な性格を持つ入団式から、団員が外へ出て参加する地域行事などさまざまなものがあります。それぞれの行事によって、参加する直接的な目的は一様ではありませんが、「団活動によって規律ある態度や基本的な礼儀を身に付ける」、「地域社会に防火防災思想を普及し、消防少年団活動のPR活動を展開する」といった意義は、いずれの行事についても共通しているといえます。
特に、地域行事への参加は、防火防災思想の普及啓発のためばかりでなく、参加内容によっては地域の人々に消防少年団の存在及び活動内容を知ってもらう上で極めて有意義で、団員の募集活動にもつながることから積極的に参加したいものです。
消防少年団の行事参加は、以下のようなものがあります。
- 消防少年団内部の行事として実施するもの
入団・進級式、発団○○周年記念式 など - 消防署が実施する行事に参加するもの
- 東京消防庁が実施する行事に参加するもの
- 地域や他の団体などが実施する行事に参加するもの
(2)行事参加上の留意事項
行事に参加するにあたっての一般的留意事項は、次のようなものです。
- 行事が営利目的のものでないこと。
- 火災予防広報など、消防少年団活動として効果があること。
- 行事の趣旨、沿革等を事前に説明し、理解させること
- 行事の開始時間を周知し、誤りのないようにすること。
- 消防少年団として規律ある行動をすること。
- 言葉遣い、服装、マナーに留意させること。
- 使用資器材等がある場合は事前に準備し使用方法を習熟させること。
- 内容によっては、事前にリハーサルをさせておく。
- 会場及び行事内容を把握し、安全管理、事故防止に配意すること。
- 会場への移動手段に配意すること。
(3)行事の実施例
消防少年団の行事
入団・進級式
一般的には年度当初(4月)に実施されています。入団式は、新入団員の消防少年団への仲間入りの式です。
次に、入団式などの進行要領を例示しましたが、それぞれの団の実情によって方法を決める必要があります。いずれにしても、このような式は、新入団員が喜んで入団し、新入団員を迎える各団員たちの温かい気持ちが大切です。

1 開式のことば 2 団歌斉唱 3 消防少年団長のあいさつ 4 隊長・班長等任命 5 表彰 6 歓迎のことば |
7 入団のことば 8 7つのちかい 9 演技披露 10 育成委員長祝辞 11 来賓祝辞 12 閉式のことば |
消防署の行事
春・秋の火災予防運動行事や防火防災訓練などに参加して、結索や包帯法などの訓練成果の披露、消火器等の使い方の指導、火災予防の呼びかけ、パンフレットの配布などを行います。
行事 | 実施内容 |
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東京消防庁の行事
東京消防出初式
出初式の起源は、300年以上も前の万治2(1659)年、江戸時代初期にまでさかのぼります。その後、やり方を変え明治、大正、昭和と出初式は行われてきました。現在では消防ヘリコプター、消防艇や各種の消防車両などがさまざまな演技を披露するほか、都民による訓練なども実施されています。
消防少年団が参加するようになったのは昭和55年からで、現在は祝賀パレードに、各団から団旗手、徒列隊員や鼓笛隊として参加しており、東京消防出初式にはなくてはならないものとなっています。
このほか、パレードには参加しませんが、多くの団が見学参加しています。


出初式の祝賀パレード
水の消防ページェント
水の消防ページェントの前身は、昭和24(1949)年2月8日から始まった「水上消防出初式」です。
これは、昭和44年を最後に中止され、昭和45(1970)年からはこれに代わって、毎年5月中旬の日曜日に「東京みなと祭」の行事として、「水の消防ページェント」として晴海埠頭で行うようになりました。
水の消防ページェントは、船舶の火災予防や水難事故の防止を呼びかけ、船舶火災の消防演習や消防艇・ヘリコプターなどによる水難救助演習、消防艇の分列航進などが行われます。
消防少年団が参加するようになったのは、昭和56年からで、現在は祝賀パレードに中央区の3団(臨港・京橋・日本橋)が参加するほか、多くの団が見学参加をしています。

地域や他団体が実施する行事
区民まつり、産業まつりなど、地域で開催される各種催物や行事があります。消防少年団は、防火パレードやパンフレットの配布など、それぞれの行事の内容に応じた参加の方法を工夫する必要があります。
計画の立て方
- 行事の内容が、消防少年団が参加するに相応しいか検討する。
- 主催者と事前に消防少年団が担当する任務や条件について打合せする。
- 団員に行事の趣旨、沿革、内容等を事前に説明し、理解させておく。
- 準備品を確認する。
- 各団員の任務を分担し、事前に訓練等が必要なもの、または製作が必要なものについては、それぞれ訓練や製作をする。
活動の展開
- 行事開始前に会場に集合する。
- 会場設営や行事参加場所、準備品をチェックする。
- 当日の参加内容により活動を開始する。
- パレードの実施
- 消火器の使用方法の指導
- 消防相談の実施
- チラシ等の配布
- 火災予防等の呼びかけ
- 会場の撤収
留意事項
- 主催者側と連絡を密にし、齟齬のないようにする。
- 他の団体等との協調を図る。
- 消防少年団として規律ある態度で臨む。
- 行事の開始時間を厳守する。
- 使用資器材等の使用方法に習熟しておく。
- 行事会場への移動手段に配意する。
行事 | 実施内容 |
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問合せ先
- 防災安全課