消防科学セーフティレポート第62号(令和7年)
2025年10月22日 更新
生理学的指標を用いた消防隊員の緊張度に関する研究
消防隊員であっても火災に出場すると緊張したという経験は珍しくない。火災現場で発生した火炎により、消防隊員は過度の精神的な緊張を感じることが予想されるが、火災現場における消防隊員の緊張を調査するためには、実際の火炎を用いて火災現場を再現した状況をつくり、消防隊員の緊張を定量化する必要がある。そこで本研究は、脳波を始めとする緊張状態を評価する各種生理学的指標を用いて、火災現場を想定した火炎等が消防隊員の精神的緊張に与える影響を定量化することを目的とした。
本研究の結果、脳波、自律神経、心拍数等のいずれの測定項目も安静時よりAFTの火炎目視時及び燃焼実験棟の火炎目視時の値が高くなり、生理学的にみると火炎を見慣れている消防隊員でも、火炎を確認することによって精神的に緊張することが分かった。 ダウンロード(PDF:714KB)
本研究の結果、脳波、自律神経、心拍数等のいずれの測定項目も安静時よりAFTの火炎目視時及び燃焼実験棟の火炎目視時の値が高くなり、生理学的にみると火炎を見慣れている消防隊員でも、火炎を確認することによって精神的に緊張することが分かった。 ダウンロード(PDF:714KB)
消防活動の休憩時における効果的な身体冷却に関する研究
消防隊員は熱中症の発症リスクが非常に高い職業である。火災現場では、長時間にわたり活動を実施する場合があり、消防隊員が熱中症を発症することなく活動を継続するためには、休憩時に体温をいかに低下させるかが重要となる。そこで、本調査研究は、消防活動における休憩時の効果的な身体冷却方法を明らかにすることを目的とした。
本研究の結果、消防活動時の休憩において、手掌前腕冷却及びアイススラリは身体冷却の方法として効果的であり、手掌前腕冷却、アイススラリ及び風冷を全て実施した場合、最も冷却効果が高いことが分かった。 ダウンロード(PDF:602KB)
本研究の結果、消防活動時の休憩において、手掌前腕冷却及びアイススラリは身体冷却の方法として効果的であり、手掌前腕冷却、アイススラリ及び風冷を全て実施した場合、最も冷却効果が高いことが分かった。 ダウンロード(PDF:602KB)
三連はしご用引綱の断裂原因の調査結果
令和6年5月、訓練中に三連はしごの引綱が断裂し、三連目が落下する事案が発生した。断裂した引綱は、配置から3カ月程度と比較的新しい引綱であり、断裂した状況が特異であったことに加え、断裂部分に変色や異臭が確認されたことから、断裂原因の調査を実施した。引綱の断裂部分において、外観を観察すると繊維の劣化が確認された。成分分析では、原因物質の特定には至らなかったが、pH測定で強酸が確認された。引張強度においても、一部の箇所でJIS規定値を大きく下回った。再現実験として、未使用の引綱に酸性液体を付着させた場合、断裂した引綱と同様に繊維の空洞化及び劣化が確認され、引張試験において特異な断裂も確認された。このことから、引張断裂の原因は何らかの酸性物質が引綱に付着したことによるものと考えられた。
ダウンロード(PDF:915KB)
不明物質の定性分析手法の確立(固体試料)
消防署から依頼される火災鑑定では、成分や危険性に関する事前の情報がない鑑定物件の定性を依頼される場合がある。しかしながら、鑑定物件の物性や含有成分を特定(定性)するまでの手法は定まっておらず、事案の都度、その手法を検討する必要があることから、当庁保有の各種分析装置を複合的に活用することで幅広く定性できる分析手法(フローチャート)の確立を目的とした。
その結果、固体の不明物質の定性分析手法をフローチャートとして統一化した。本フローチャートに沿って分析をすることで、固体試料200個中178個(89%)の不明物質を特定又は推定した。フローチャートを確立することで、注意を要する作業及び手順の蓄積がしやすくなり、従来よりも短時間で分析・回答することが可能となった。 ダウンロード(PDF:402KB)
その結果、固体の不明物質の定性分析手法をフローチャートとして統一化した。本フローチャートに沿って分析をすることで、固体試料200個中178個(89%)の不明物質を特定又は推定した。フローチャートを確立することで、注意を要する作業及び手順の蓄積がしやすくなり、従来よりも短時間で分析・回答することが可能となった。 ダウンロード(PDF:402KB)
噴射剤を含む危険物の試験前処理手法に関する研究について
当庁では、危険物に関わる試験を行っているところであるが、その中で、市中に流通しているエアゾール缶の危険物の性状の評価について課題を抱えていた。その課題を解決するために効果的な前処理手法を確立することを目的とした。
一般的にエアゾール缶には高圧の気体である噴射剤と噴射される成分(以下「内容物」という。)が封入されている。市中に流通しているエアゾール缶の危険物の性状を確認しようとした場合、内容物のみの危険物の性状を評価する必要があるが、エアゾール缶の内容物だけの危険物の性状を評価する統一的な手法は存在しなかった。
本研究では、エアゾール缶の噴射剤を取り除くためエアゾール缶を噴射し、噴射剤と内容物が混合したもの(以下「混合物」という。)の沸点に着目し、試験の前処理手法について検討を行った。今回の試料においては、40℃で前処理することにより、内容物の成分割合を概ね変化させることなく、噴射剤をほぼ取り除くことができ、エアゾール缶の内容物の引火点を測定することができた。
一方で、エアゾール缶の種類により、前処理条件は試料の成分により異なることが判明したため、エアゾール缶の各製品の成分により前処理手法の条件については検討することが必要である。 ダウンロード(PDF:531KB)
一般的にエアゾール缶には高圧の気体である噴射剤と噴射される成分(以下「内容物」という。)が封入されている。市中に流通しているエアゾール缶の危険物の性状を確認しようとした場合、内容物のみの危険物の性状を評価する必要があるが、エアゾール缶の内容物だけの危険物の性状を評価する統一的な手法は存在しなかった。
本研究では、エアゾール缶の噴射剤を取り除くためエアゾール缶を噴射し、噴射剤と内容物が混合したもの(以下「混合物」という。)の沸点に着目し、試験の前処理手法について検討を行った。今回の試料においては、40℃で前処理することにより、内容物の成分割合を概ね変化させることなく、噴射剤をほぼ取り除くことができ、エアゾール缶の内容物の引火点を測定することができた。
一方で、エアゾール缶の種類により、前処理条件は試料の成分により異なることが判明したため、エアゾール缶の各製品の成分により前処理手法の条件については検討することが必要である。 ダウンロード(PDF:531KB)
高機能面体の実用化検証
消防活動時における消防隊員の受傷、事故等の防止へ向けて、暗所・濃煙環境下でも視覚情報や温度情報が視認できる安全性と活動性を向上させる装備品の導入が求められることから、令和5年度東京消防庁公募型研究(積極支援型)において、暗所・濃煙環境下の視覚が確保できるウェラブル装置に関する研究として高機能面体の実用化検証を行った。
本研究で使用する高機能面体は、空気呼吸器の面体にヘッドマウントディスプレイと赤外線カメラ・可視光カメラを搭載し、赤外線カメラ映像により暗闇や濃煙下の活動や要救助者の検索を支援するものであり、タブレットにより現場隊長や指揮本部との、リアルタイムな情報共有も可能となる。実運用を想定した訓練等により検証した結果、高機能面体の有効性が確認されたものの、実用化へ向けた課題があることが確認された。 ダウンロード(PDF:2.0MB)
本研究で使用する高機能面体は、空気呼吸器の面体にヘッドマウントディスプレイと赤外線カメラ・可視光カメラを搭載し、赤外線カメラ映像により暗闇や濃煙下の活動や要救助者の検索を支援するものであり、タブレットにより現場隊長や指揮本部との、リアルタイムな情報共有も可能となる。実運用を想定した訓練等により検証した結果、高機能面体の有効性が確認されたものの、実用化へ向けた課題があることが確認された。 ダウンロード(PDF:2.0MB)
EN469(欧州防火装備性能基準)適合に基づくフルハーネス型防火服の開発
平成31年の労働安全衛生法の改正により、安全帯が墜落制止用器具に名称が変更され、地上より6.75mを越える高さでの使用においては、従来の胴ベルト型墜落制止用器具ではなく、フルハーネス型墜落制止用器具(以下「フルハーネス」という。)を使用することが原則となっている。
しかし、火災現場は、特異な場合として捉えられており、現在でも火災現場で使用する防火服には、胴ベルト型が採用されている。このため、火災現場における消防隊員の多くは6.75mを超える状況下でも胴ベルト型を使用している現状がある。
そこで、フルハーネスの普及を目指し、防火性能を持たせたフルハーネスと防火服が一体となった製品を東京消防庁と共に研究開発を実施した。 ダウンロード(PDF:2.9MB)
しかし、火災現場は、特異な場合として捉えられており、現在でも火災現場で使用する防火服には、胴ベルト型が採用されている。このため、火災現場における消防隊員の多くは6.75mを超える状況下でも胴ベルト型を使用している現状がある。
そこで、フルハーネスの普及を目指し、防火性能を持たせたフルハーネスと防火服が一体となった製品を東京消防庁と共に研究開発を実施した。 ダウンロード(PDF:2.9MB)
消防の組織文化分析を踏まえた効果的な事故対策立案結果の活用
東京消防庁では、安全推進部創設以降、安全に関する取組への評価等を通じた組織の安全意識の客観化と自己把握が図られている。本研究では、安全推進部創設以前の消防組織における安全管理の傾向を把握するため、組織内の上から下への流れとして、東京消防庁での幹部指示事項における「事故」及び「安全」への言及に着目した組織文化分析を行う。次に、下から上への流れとして、実際の消防署での事故報告に記載された対策立案結果について、総務省消防庁による集計を基にした分析を行う。その上で、消防では「人」を中心とした安全管理が行われてきたという仮説のもと、消防の組織全体での安全管理の傾向を考察する。
分析を行った結果、消防では現場へ向けた幹部指示事項、及び事故報告内の対策においては、ともに「人」への対策を中心とした安全管理が行われる傾向が見られた。今後、「人」以外の要素にも目を向けた多重的なヒューマンエラー対策を進めるためには、対策立案結果の有効活用が必要と考え、「多重的なヒューマンエラー対策集」、「事故種類別リスク評価に基づく対応方針」及び「効果的な分析のための集計様式案」の3つの活用案を作成した。 ダウンロード(PDF:2.1MB)
分析を行った結果、消防では現場へ向けた幹部指示事項、及び事故報告内の対策においては、ともに「人」への対策を中心とした安全管理が行われる傾向が見られた。今後、「人」以外の要素にも目を向けた多重的なヒューマンエラー対策を進めるためには、対策立案結果の有効活用が必要と考え、「多重的なヒューマンエラー対策集」、「事故種類別リスク評価に基づく対応方針」及び「効果的な分析のための集計様式案」の3つの活用案を作成した。 ダウンロード(PDF:2.1MB)