梅雨が明け、本格的な夏の暑さがやってくるこれからの季節は、熱中症による救急搬送が多くなります。
また、水に接する機会が多くなり、河川・プール・海などでの水による事故が増える時期でもあります。熱中症や水の事故を防ぐために、次のような点に注意して、楽しい夏を過ごしましょう。
昨年の熱中症の発生状況や新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「新しい日常」を踏まえて、熱中症の予防対策をしましょう。
○ ウォーキングなどの運動をすることで、汗をかく習慣を身に付けるなど、暑さに強い体をつくりましょう。
〜行動の工夫〜
○ 日陰を選んで歩きましょう。
○ 涼しい場所に避難しましょう。
○ 適宜休憩する、頑張らない、無理をしないようにしましょう。
〜住まいの工夫〜
○ 玄関に網戸、向き合う窓を開けるなど、風通しを利用しましょう。
○ ブラインドや、すだれを活用し、窓から射し込む日光を遮りましょう。
○ 我慢せずに冷房を入れ、扇風機も併用するなど、空調設備を利用して、部屋の温度を調整しましょう。
〜衣類等の工夫〜
○ ゆったりした衣服や、襟元をゆるめて通気しましょう。
○ 炎天下では、輻射熱を吸収する黒色系の素材を避けましょう。
○ 帽子や日傘を使いましょう(帽子は時々はずして、汗の蒸発を促しましょう)。
○ こまめに水分補給・のどが渇く前に水分補給しましょう。
○ 1日あたり1.2ℓの水分補給・起床時、入浴前後にも水分を補給しましょう。
○ 環境条件を把握しておきましょう。
○ 状況に応じた水分補給を行いましょう。
○ 個人の条件や体調を考慮しましょう。
○ 服装に気をつけましょう。
○ 子供を車の中で、決して一人にしないでください。
○ 子供は大人の想像以上に輻射熱等を受けていると考えましょう。
○ 子供の体調の変化に注意しましょう。
暑い時期にも安全に「新しい日常」を実践するために、それぞれの感染予防対策による熱中症リスクの増大を防ぐことが重要です。
○ 夏期の気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなるおそれがあります。このため、屋外で人と十分な距離(2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクをはずしましょう。
○ マスク着用時は、激しい運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心掛けるようにしましょう。
○ 冷房時でも換気扇や窓開放により換気を行いましょう。その場合には、室温が高くなるので、エアコンの温度設定をこまめに調整しましょう。
○ 日頃の体温測定、健康チェックは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、熱中症を予防する上でも有効です。体調が悪いと感じた時は、無理せず自宅で静養をするようにしましょう。
○ 熱中症になりやすい高齢者、子ども、障害者への目配り、声掛けをするようにしましょう。
参考文献:熱中症環境保健マニュアル2022
なお、環境省の熱中症予防情報サイトにおいて、新しい生活様式における熱中症予防行動について掲載されていますので、参考にしてください。
「熱中症予防情報サイト」⇒「トピックス」⇒「新しい生活様式と熱中症予防」
熱中症を疑った時には、放置すれば死に直結する緊急事態であることをまず認識し、 救急車を呼ぶことや、応急手当を実施するなど、以下のチェックシートを参考に対応してください。
※スポーツや激しい作業・労働などによって起きる労作性熱中症の場合は全身を冷たい水に浸す等の冷却法も有効です。
参考文献:熱中症環境保健マニュアル2022(環境省)より
東京消防庁管内1)において、令和3年6月1日から9月30日までの4か月間に、熱中症(熱中症疑い等を含む。)により3,414人が救急搬送されています。
例年、梅雨明け後の最初に気温が高温となる日に、急激に救急搬送人員が増加する傾向があり、令和3年は、梅雨が明けた7月16日頃から熱中症による救急搬送人員が増加しました(図3)。
救急搬送時の初診時程度をみると、救急搬送された3,414人のうち約4割にあたる1,266人が入院の必要があるとされる中等症以上と診断されています。 重症以上は105人で、そのうち19人は生命の危険が切迫しているとされる重篤と診断され、1人が死亡しています(図4)。
年齢区分別の救急搬送状況をみると、65歳以上の高齢者が1,827人で全体の約半数を占め、 そのうち約7割にあたる1,335人が75歳以上の後期高齢者でした(図5−1、図5−2)。
救急要請時の発生場所では、住宅等居住場所が1,280人で全体の37.5%を占め最も多く、 次いで道路・交通施設が1,113人で32.6%を占めていました(図6)。
○ エアコンが故障しており、夕方に家族が帰宅し、具合が悪そうな傷病者を発見した。
【7月 90代 熱中症(中等症) 気温27.7℃ 湿度79%】
○ 自宅でテレワーク中、頭痛、ふらつき、嘔気があり、様子をみていたが症状が改善されなかった。
【8月 30代 熱中症(軽症) 気温34.9℃ 湿度65%】
◇ 水分補給を計画的、かつ、こまめにしましょう。
◇ 窓を開け風通しを良くし、エアコンや扇風機等を活用して、室内温度を調整するなど、熱気を溜めないようにしましょう。
◇ マスクをしていると、汗の蒸発が妨げられ、脱水等を起こしやすくなります。屋外で、十分な距離(2m以上) を確保できる場合は、マスクをはずすなどして、熱中症対策と感染症対策の両立に努めましょう。
○ 後部座席に子どもを乗せた後、外から運転席に移動している途中、子どもが、誤ってドアロックボタンを押下してしまった。
【7月 1歳 熱中症(軽症)28.4℃ 湿度75%】
○ 親が降車した際、遊んでいた車のキーでロックをかけてしまい、車内に閉じ込められてしまった。
【8月 0歳 熱中症(中等症)気温32.7℃ 湿度63%】
◇ 少しの間でも子供を車内に残さないようにしましょう。
◇ 子供が、自分で内鍵をかけたり、車の鍵で遊んでいて誤って、 ロックボタンを押してしまい閉じ込められる事故が発生しています。車を降りる際は、鍵を持って降りましょう。
○ 早朝から防波堤で釣りをしていたが、昼過ぎに、倒れ込んで意識が朦朧としている状態を隣で釣りをしていた人が発見した。
【7月 70代 熱中症疑い(重篤) 気温32.1℃ 湿度56%】
○ 朝から工事現場で作業をしており、昼前から嘔気症状を発症、様子を見ながら仕事を続けていたが徐々に症状が増悪してきた。
【7月 40代 熱中症(中等症) 気温32.8℃ 湿度66%】
○ 小学校の体育で20mシャトルランを実施、参加した児童2名がそれぞれ、手足のしびれを訴えたため、教員により救急要請となったもの。
【6月 10歳 熱中症(中等症)2名 気温31.0℃ 湿度40%】
○ 野球の練習をしていたところ、嘔気、頭痛、脱水症状を発症、しばらく様子を見ていたが、症状が改善せず、救急要請となったもの。
【7月 10代 熱中症の疑い(軽症) 気温31.8℃ 湿度66%】
◇ 水分補給を計画的、かつ、こまめにしましょう。
◇ 屋外では帽子を使用しましょう。
◇ 襟元を緩めたり、ゆったりした服を着るなど服装を工夫しましょう。
◇ 指導者等が積極的、計画的に休憩をさせたり、体調の変化を見逃さないようにしましょう。
◇ 実施者は自分自身で体調管理を行い、体調不良の時は無理をせず休憩しましょう。
参考文献:熱中症 環境保健マニュアル2022(環境省)より
夏は河川でバーベキューをしたり、プール等に出かけたりする機会が増えて楽しい季節ですが、おぼれて救急搬送される事故も、この時期に多くなります。
河川やプール等でおぼれる事故は、生命を脅かす事故となる可能性が高いことから、十分な注意が必要です。
● 小さい子供と一緒に水遊びをする際は、子供から目を離さず、保護者や大人が必ず付き添って遊びましょう。
● 飲酒後や体調不良時には遊泳を行わず、そのような人が遊泳しようとしている時は、遊泳をやめさせましょう。
● 海や河川では、気象状況に注意を払い、荒天時や天候不良が予測される場合は遊泳や川岸等でのレジャーを中止しましょう。
● 海や河川では、ライフジャケットを着用するなど、事故の未然防止に努めましょう。
東京消防庁管内1)では、平成29年から令和3年2)までの6月から9月までに発生した河川やプール等でおぼれる事故3)により、52人が救急搬送されています(図7)。
月別にみると、8月に搬送人員が多くなっています(図8)。
年代別にみると、9歳以下が最も多く、次いで40歳代、10歳代の順となっています。
また、9歳以下では、河川、プール、公園の水場及び海とさまざまな場所で発生しています(図9)。
おぼれる事故が発生している場所では、河川が31人(59.6%)と最も多く、次いでプールが15人(28.8%)と高い割合を占めています。河川では、地形により流れが速い場所もあるので注意が必要です(図10)。
初診時程度別割合では、生命の危険が強いと認められる重症以上の割合が約4割以上を占めています(図11)。
0歳から5歳までの乳幼児の事故は、プールで最も多く発生しています(図12)。
過去には、ビニールプールでも発生していることから、水遊びをさせる際は、子供から目を離さないようにしましょう。
1 |
【目を離した隙におぼれた事故】
自宅用ビニールプールで遊んでいる子どもから目を離したところ、戻ってみると子どもがプール内で倒れていた(1歳 中等症)。 |
---|---|
2 |
【河川でおぼれた事故】
ボートで川を下っていたところ、ボートが転覆し、川の中に投げ出されておぼれた(70代 死亡)。 |
3 |
【飲酒後に河川でおぼれた事故】
川のそばでバーベキュー(飲酒あり)中に、対岸へ渡ろうとしたところ流されておぼれた(20代 中等症)。 |
4 |
【飛び込みによる事故】
公園内の浅い池で、石の上から飛び込んだ際に前のめりに転倒し、顔が水に浸かりおぼれた(1歳 軽症)。 |
突然に心肺停止した方を救命するためには、救急車が到着するまでの間、バイスタンダー(その場に居合わせた人)による心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)の使用が重要です。尊い命を救うために心肺蘇生の方法を身につけましょう。
心肺蘇生 | 胸骨圧迫(心臓マッサージ) | 人工呼吸 | ||||||
対象 | 実施回数の比率 | 圧迫位置 | 圧迫法 | 圧迫の深さ | テンポ | 吹き込み量 | 吹き込み時間 | 吹き込み回数 |
成人 |
胸骨圧迫 30回 人工呼吸 2回 |
胸骨の下半分 (胸の真ん中) |
両手 | 約5cm |
100〜 120/分 |
胸の上がりが見える程度の量 | 約1秒 | 2回 |
小児 |
両手 又は 片手 |
胸の厚さの1/3 | ||||||
乳児 | 2指 |
講習の種別 | 講習内容 |
応急救護講習 (希望する時間) |
AEDを含む心肺蘇生、止血法及び外傷の応急手当要領等について学ぶコース(受講者の希望に応じて任意の時間で行う) |
救命入門コース (45分)(90分) |
普通救命講習等の受講が困難な都民及び小学校4年生以上を対象にした、胸骨圧迫とAEDの使用方法を中心に学ぶコース |
普通救命講習 (2時間又は3時間) |
心肺蘇生(AEDを含む成人に対する方法)を中心に学ぶコース ※【電子学習室】を併用した講習の場合は2時間 |
普通救命講習(自動体外式除細動器業務従事者) (3時間又は4時間) |
普通救命講習の内容にAEDの知識確認と実技評価が加わったコース(AEDを一定頻度で使用する可能性のある人向け) ※【電子学習室】を併用した講習の場合は3時間 |
普通救命再講習 (2時間20分) |
普通救命講習の認定を継続するために、3年以内に再度受講するためのコース |
普通救命ステップアップ講習 (2時間) |
救命入門コース(90分)を受講してから1年以内に受講することで、普通救命講習の認定証が交付されるコース |
上級救命講習 (8時間) |
AEDを含む救命処置のほかに、小児・乳児の心肺蘇生、けがの手当や搬送方法などを学ぶコース |
上級救命再講習 (3時間) |
上級救命講習の認定を継続するために、3年以内に再度受講するためのコース |
上級救命ステップアップ講習 (5時間) |
普通救命講習または普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習を受講してから1年以内に受講することで、上級救命講習の認定証が交付されるコース |
応急手当普及員講習 (24時間) |
普通救命講習、普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習の指導要領を学ぶためのコース |
応急手当普及員再講習 (3時間) |
応急手当普及員の認定を継続するために、3年以内に再度受講するためのコース |
○ 講習修了者には、認定証が交付されます。(応急救護講習では認定証等の交付はされませんが、救命入門コースは受講証が交付されます) ○ 講習に関する問合せ先
■東京消防庁管内の消防署・消防分署・消防出張所
■公益財団法人東京防災救急協会 救急事業本部 講習受付 03(5276)0995(平日 午前9時〜午後4時) インターネットでの受付はhttps://www.tokyo-bousai.or.jp(24時間可能) ■東京消防庁ホームページ (https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp) (ホームページ内を以下のメニューに沿って進んでください。) ⇒「試験・講習」⇒「応急手当講習会」 |
119番通報後、救急隊が到着するまでの間に、通信指令員や出場途上の救急隊員が電話で応急手当のアドバイス(口頭指導)をすることもあります。 身の安全を確保したうえで、電話に出られるよう落ち着いて行動してください。
応急手当の方法が分からない場合や応急手当の実施状況の確認のために、映像の共有によるアドバイスを行っています(Live119)。
通報者のスマートフォンへショートメッセージにてURLを送付し、アクセスしていただきます。スマートフォンから撮影した動画をライブ映像として共有することで、適切な応急手当のアドバイス(口頭指導)を行います。
東京消防庁公式アプリは、心肺蘇生の実施方法を動画で解説する機能や、心肺蘇生を実施する際のサポートとなる胸骨圧迫テンポ音機能等、 緊急時にも役に立つ救急サポートツールを搭載しています。ぜひスマートフォン等にダウンロードしてご活用ください。