毎年8月は電気使用安全月間です。電気は、私たちの生活に必要不可欠なエネルギーとして社会の隅々に深く浸透しています。電気や電気製品にかかわる火災は、東京消防庁管内で毎年1,000件以上発生しており、全火災件数に占める割合も近年大きく増加しています。
電気火災の主な原因としては、電気や電気製品を使用する際の不適切な維持管理や取扱い上の不注意などがあげられます。東京消防庁では、これらの電気や電気製品に関連する火災原因を調査し、電気に起因する火災予防対策に反映することで、注意喚起に繋げております。
「小さなこげ跡」も火災の1つです。たとえ、「小さなこげ跡」でも、それは偶然に消えただけで、大きな火災になっていたかもしれません。「小さなこげ跡」を見つけた時は、119番通報をお願いします。
もし、119番通報するべきかどうか迷ったときは、東京消防庁ホームページあるいは東京消防庁公式アプリ内の東京消防庁版電気製品火災相談ガイドをご覧になるか、お住まいの管轄消防署にご相談ください。
昭和56年、経済産業省(当時の通商産業省)は、関係各団体が自主的に実施していた電気に対する安全運動を、集中的に展開することにより、一般の電気使用者に対する知識と理解を深め、電気事故の防止に役立てることを目的に、「電気使用安全月間」の実施を主唱し、各団体は統一的なテーマに沿って毎年様々な取組みを実施しています。
令和3年中、東京消防庁管内では3,935件の火災が発生し、そのうち電気設備機器などによる火災(以下「電気火災」という。)は1,399件(前年比236件増加)と、全火災件数の35.6%を占めています(表1)。
表1 最近5年間の電気火災の状況
年 別 |
全 火 災 件 数 |
電 気 火 災 件 数 |
全 火 災 に 対 す る 割 合 (%) |
電気火災件数 | 電気火災損害状況 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
建物 |
航 空 機 |
車 両 |
船 舶 |
そ の 他 |
焼 損 床 面 積 (u) |
焼 損 表 面 積 (u) |
損 害 額 (千円) |
死 者 (人) |
負 傷 者 (人) |
||||||||
小 計 |
全 焼 |
半 焼 |
部 分 焼 |
ぼ や |
|||||||||||||
29年 | 4,204 | 1,152 | 27.4 | 1,019 | 22 | 17 | 118 | 861 | - | - | - | 133 | 4,447 | 1,819 | 1,208,237 | 13 | 171 |
30年 | 3,972 | 1,205 | 30.3 | 1,043 | 14 | 28 | 113 | 888 | - | - | - | 162 | 3,933 | 1,549 | 1,051,712 | 11 | 164 |
元年 | 4,085 | 1,283 | 31.4 | 1,143 | 15 | 21 | 103 | 1,004 | - | - | - | 140 | 5,173 | 1,663 | 4,197,587 | 13 | 159 |
2年 | 3,693 | 1,163 | 31.5 | 1,057 | 13 | 15 | 102 | 927 | - | - | - | 106 | 2,767 | 1,646 | 917,825 | 14 | 159 |
3年 | 3,935 | 1,399 | 35.6 | 1,274 | 16 | 31 | 111 | 1,116 | - | - | - | 125 | 4,878 | 2,760 | 1,576,641 | 18 | 182 |
令和3年中の電気火災1,399件の出火要因をみると、「維持管理不適」が531件、「取扱方法不良」が365件、「設置(取付)工事方法不良」が66件、「構造機構不良・改悪する」が65件などとなっており、使用者の取り扱いに起因する火災がほとんどです(図1)。電気設備、電気器具、コンセント等は、普段から点検・清掃などを適切に行うとともに、使用する場合は、必ず取扱説明書などを良く読み、正しく使用しましょう。
令和3年中における家庭電気製品の火災状況は、充電式電池(モバイルバッテリなど)が87件、コンセントが86件、電気ストーブが85件、差込みプラグが82件、電子レンジが65件、コードが53件などとなっています(図2)。
充電式電池は、モバイルバッテリなどに使用されるリチウムイオン電池からの火災が増加しています。機器購入時に付属されているメーカー指定の充電器やバッテリ(純正品)を使用し、膨張、異音、異臭などの、異常を感じた場合は使用しないでください。また、廃棄の際は事業団体が回収するリサイクルへ出しましょう。
コンセントや差込みプラグといった配線器具は、差込みプラグのトラッキング現象やコンセント内部の接続部の緩みによる発熱、プラグをコンセントに差込む際の、アース線やヘアピン等の挟み込みなどを要因とした火災が発生しています。普段から、使用している電気製品やコード、コンセント、差込みプラグなどの点検が大切です。また、日頃使用していない器具は、差込みプラグをコンセントから抜くよう心がけてください。
令和3年中、東京消防庁管内では、延長コードの差込みプラグや電気機器の電源プラグのトラッキング現象による火災が39件発生(前年比18件増加)しています。トラッキング現象とは、コンセントに差し込んだプラグの差し刃間に付着した綿埃等が湿気を帯びて微小なスパークを繰り返し、やがて差し刃間に電気回路が形成され出火する現象を言います(図3・写真1)。
トラッキング現象による火災は、隠れた部分で発生することから、発見が遅れて思わぬ被害に繋がる場合があります。
トラッキング現象による火災を防ぐため、差込みプラグは、使用時以外はコンセントから抜くようにしましょう。長時間差したままのプラグ等は、定期的に点検し、乾いた布等で清掃し、発熱等の異常がある場合は、交換しましょう。
特に、埃や湿気の多い環境で使われているものや、家具等の陰に隠れているものには、注意しましょう。
延長コードの差込みプラグや電気機器の電源プラグを、コンセントやテーブルタップに差し込む際、アース線やヘアピンなどを挟み込んでしまい、ショートして出火する火災が増加しています(写真2)。令和3年中に発生したこのような火災は47件(前年比4件増加)で、最近10年間で最も多く発生しました(図4)。
電気製品の使用の有無にかかわらず、コンセントに電源プラグを接続しているときには通電しており、感電や火災の危険があることを認識しましょう。