救急隊員
● 救急隊員の出場体制等
救急車が配置されている消防署所には、救急隊の構成に必要な3名以上の救急技術認定者(以下「救急隊員」と表記します。)が災害出場のために勤務しており、救急車、又はポンプ車の隊員等として勤務します。
救急隊(救急車)の乗員は、救急隊長・救急員・救急機関員(救急車の運行担当)の3名の救急隊員から構成され、救急隊長・救急員のうち最低1名は国家資格である救急救命士が乗務し、高度な救急処置を実施できる体制を確保しています。
さらに「気管挿管」、「薬剤投与」及び「血糖測定」等の救急救命処置を実施するための特別な研修を修了し、認定された救急救命士が乗務している救急隊もあり、今後資格者の計画的な養成により、全救急隊に乗務する予定です。
一方、ポンプ隊員として勤務する救急隊員は、他のポンプ車の隊員とともに、救急現場にポンプ車で出場する場合があります。
救急隊員以外のポンプ隊員は、「応急手当指導員」という資格をもち、救急隊員と同等の処置は資格上できないものの、心肺蘇生処置や創傷・固定処置等の救急処置を実施します。
● 救急隊員等の資格、実施可能救急処置・使用資器材
救急隊員(消防職員)は、資格に応じて、実施可能な救急処置及び使用できる救急資器材が定められています。
I 心肺停止状態、ショック、異物による窒息等の重症傷病者に対する救急処置
救急処置・使用資器材内容 | 資格 | ||
---|---|---|---|
救急救命士※1 | 救急隊員 | 応急手当指導員 | |
乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液 | 〇 | - | - |
心肺機能停止前の傷病者に対する静脈路確保及び輸液 | ● | - | - |
食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスクによる気道確保 | 〇 | - | - |
気管内チューブによる気道確保 | ● | - | - |
アドレナリンの投与 | ● | - | - |
ブドウ糖溶液の投与 | ● | - | - |
自己注射が可能なアドレナリン製剤によるアドレナリンの投与※2 | ○ | - | - |
自動式心マッサージ器の使用による体外式胸骨圧迫心マッサージ | 〇 | 〇 | - |
経鼻エアウェイによる気道確保 | 〇 | 〇 | - |
経口エアウェイによる気道確保 | 〇 | 〇 | - |
鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去 | 〇 | 〇 | - |
気管内チューブを通じた気管吸引 | 〇 | 〇 | - |
口腔内の吸引 | 〇 | 〇 | - |
用手による気道確保※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
自動体外式除細動器による除細動※3 ※4 | 〇 | 〇 | 〇 |
用手による胸骨圧迫心マッサージ※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
呼気吹き込み法による人工呼吸※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
バッグマスクによる人工呼吸 | 〇 | 〇 | 〇 |
用手による異物の除去※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
- ※1 ●は研修を修了し認定された救急救命士のみ可能
- ※2 アドレナリン製剤はあらかじめ傷病者に処方されているものを使用
- ※3 非医療従事者も実施可能な処置
- ※4 救急隊員は心電図の波形を確認後に実施する
II I以外の救急処置及び特殊病態領域の処置
救急処置・使用資器材内容 | 資格 | ||
---|---|---|---|
救急救命士※1 | 救急隊員 | 応急手当指導員 | |
精神科領域の処置 | 〇 | - | - |
小児科領域の処置 | 〇 | - | - |
産婦人科領域の処置※5 | 〇 | - | - |
酸素吸入器による酸素投与 | 〇 | 〇 | - |
ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定 | 〇 | 〇 | - |
特定在宅療法継続中の傷病者の処置の継続 | 〇 | 〇 | - |
- ※5 臍帯結紮・切断、胎盤処理、新生児の蘇生、子宮底輪状マッサージ
III 資器材を用いた観察
救急処置・使用資器材内容 | 資格 | ||
---|---|---|---|
救急救命士※1 | 救急隊員 | 応急手当指導員 | |
血糖値測定器を用いた血糖測定 | ● | - | - |
聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取 | 〇 | 〇 | - |
血圧計の使用による血圧の測定 | 〇 | 〇 | - |
心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送 | 〇 | 〇 | - |
パルスオキシメータによる血中酸素飽和度の測定 | 〇 | 〇 | - |
IV その他の救急処置
救急処置・使用資器材内容 | 資格 | ||
---|---|---|---|
救急救命士※1 | 救急隊員 | 応急手当指導員 | |
外出血の止血(直接圧迫止血・間接圧迫止血)※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
創傷処置(ガーゼ等による被覆)※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
骨折処置(副子等による固定)※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
体位管理(傷病者の症状に適した体位の保持)※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
熱傷に対する冷却・被覆処置※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
必要な体位の維持、安静の維持、保温※3 | 〇 | 〇 | 〇 |
心臓又は呼吸機能が停止している傷病者の四肢の静脈に、留置針を穿刺し、輸液のための静脈路を確保します。なお、認定を受けた救急救命士は、ショック状態等一定の条件を満たした心肺機能停止前の傷病者にも実施可能です。認定を受けた救急救命士が薬剤投与を行う場合は、この静脈路から投与します。
呼吸機能が停止している傷病者の口腔から食道にむけて挿入し、食道に位置する先端のカフと口腔内に位置するカフを膨らませ閉鎖することにより、人工呼吸による空気(酸素)が強制的に気管から肺に送気されます。
呼吸機能が停止している傷病者の口腔から食道にむけて挿入し、食道に位置する先端のカフと口腔内に位置するカフを膨らませ閉鎖することにより、人工呼吸による空気(酸素)が強制的に気管から肺に送気されます。
心臓及び呼吸機能が停止している傷病者の口腔から気管の中まで挿入し、先端のカフを膨らませ閉鎖することにより、人工呼吸による空気(酸素)が強制的に気管から肺に送気されます。
先端についているマスクを傷病者の鼻と口を覆うように顔に密着させ、酸素のチューブを接続したバッグを加圧することにより、人工呼吸を行うものです。
心臓機能が停止している傷病者に対して、輸液セットの側管にアドレナリン(強心剤)の入っているシリンジを接続し薬剤を投与します。
意識障害のため、舌根(舌の根元)が落ち込み、気道が閉塞している又は閉塞するおそれのある傷病者の鼻・口腔内に挿入することにより、気道を確保します。
餅や肉片等を咽頭・喉頭(のどの奥)に詰まらせ気道が閉塞した際に、先端が物をつまめる形状となっているこのはさみ状の鉗子(かんし)で異物を取り出します。
意識障害や自力で口腔内や咽喉の粘液・異物を喀出する機能が低下している傷病者に対して、口腔内からチューブを挿入し、電池式の装置を駆動させて、粘液・異物等を吸引します。
マギール鉗子を使用する際や、チューブを挿入する際の補助となる器具で、舌を押し上げ、傷病者の喉頭を観察します。ビデオ喉頭鏡は頸椎損傷等の理由で喉頭鏡では気管内チューブの挿入が困難な場合に使用します。
心臓機能が停止している傷病者にパッドを装着することにより、自動的に心電図を解析し、除細動の必要がある場合に、音声で通電ボタンを押下する指示を出します。市民等の非医療従事者も使用可能です。
ポンプ隊積載の機器と異なり、救急隊員が画面上の心電図を判読し、除細動適応の場合、機器の解析結果に従い通電ボタンを押下します。また、気道確保器具と接続することで、呼気二酸化炭素(ETCO2)を経時的に測定することができます。
低血糖発作による意識障害が疑われる場合、認定を受けた救急救命士が傷病者の手指から少量の血液を採取し、血糖値を測定します。測定の結果、血糖値が一定の数値を下回った場合、認定を受けた救急救命士が静脈路を確保し、ブドウ糖溶液を投与します。
特殊なセンサーがついているクリップ型の器具を傷病者の手指等に装着することにより、傷病者の動脈血酸素飽和度(SpO2)や脈拍数を非侵襲的に測定します。
※ 動脈血酸素飽和度 ※
動脈血中の酸素量を示す指標となる数値
● 救急隊員の人員配置状況
救急隊員の人員配置状況は次のとおりです。救急隊員は2,800名であり、そのうち救急救命士は2,182名となっています(令和6年4月1日現在)。
救急隊は24時間勤務を3交替で行う体制であることから、救急隊に乗車している救急救命士の平均人数は、2,182名÷274隊÷3交替=2.6名となっています。
救急技術認定者数 | 総数 | 女性内訳 | 比率 | |
---|---|---|---|---|
8,105 | 591 | 7.30% | ||
救急隊員数 | 2,800 | 119 | 4.30% | |
救急救命士 | 救急隊員配置人員 | 2,182 | 104 | 4.80% |
その他(災害救急情報センター、消防学校勤務等) | 911 | 189 | 20.70% | |
合計 | 3,093 | 293 | 9.50% | |
救急救命士以外 | 救急隊員配置人員 | 618 | 16 | 2.60% |
その他(災害救急情報センター、消防学校勤務等) | 4,394 | 282 | 6.40% | |
合計 | 5,012 | 298 | 5.90% |
令和6年4月1日現在