もうすぐ、就職・転勤・入学など、新しい生活が始まる季節です。
新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅で過ごす時間が増加している昨今、家具などを動かす引っ越しや模様替え、テレワーク環境の整備のタイミングに、家具類の転倒・落下・移動防止対策(以下「家具転対策」という。)を見直しましょう。
大きな地震が発生すると、部屋の中では「3つの危険」が発生するのを知っていますか?
大きな地震が発生すると、家具などが倒れて下敷きになったり、上から落ちてきたものがぶつかったり、割れた食器やガラスの破片を踏んだりして、けがをすることがあります。
近年、日本で発生した大きな地震でけがをした人のうち、約30%〜50%が、家具類の転倒・落下・移動が原因によるものでした(図1)。
過去に発生した大きな地震では、家具類の転倒・落下・移動によって火災が発生した事例がありました。
地震で家具類の収容物(本棚の本など)が落下したり、家具が倒れたりすることで、ストーブの電源スイッチが押され、近くにあった燃えやすいものに火が付き火災が発生することがあります。
出入口付近に家具転対策を実施していない家具を配置してしまうと、地震により転倒するなどした家具が扉や窓を塞ぎ、逃げられなくなること(避難障害)があります。
安全・確実に避難するためには、出入口付近や避難経路に家具を置かないことや、家具を置く向きを工夫するなど、レイアウトを考えることが非常に大切です。
まずは、納戸やクローゼット、備え付けの収納家具などに荷物を集中的に収納して、リビングや寝室などの普段過ごすことが多い場所に家具を置かないようにしましょう。
また、棚などに物を収納する時は、重たいものを下に収納し、重心を低くして揺れにくくしましょう。
家具を置く場合は、倒れたときのことを考えて、レイアウトを工夫しましょう。
普段寝ているベッドの方に家具が倒れてこないように置いたり、家具が移動などして部屋の出入口など避難通路を塞いだりしないよう配置しましょう。
器具を使った家具転対策で、最も効果の高い方法は、L型金具などの器具を使用し、家具と壁をネジ留めする方法です。
壁に穴を開けられない場合は、ネジ留めが不要な対策器具を組み合わせて固定する方法もあります。例えば、本棚などの場合は、ポール式器具とストッパー式器具を組み合わせて設置することで、L型金具と同等の効果が得られます(図2)。
この他にも、ホームセンターなどには、穴を開けたりすることなく設置し、固定できる器具が多く販売されています。対策を行う家具などの形状・重さに合った器具を選び、器具の効果が十分に発揮できるよう、正しく設置することが重要です。
令和3年10月7日、東京都内で、東日本大震災から10年ぶりとなる震度5強の地震が発生しました。この地震でも、家具類の転倒・落下・移動により事例が発生しています。
また、この地震では東京都内で長周期地震動階級2を観測しました。長周期地震動とは、揺れが1往復するのにかかる時間が長い、ゆっくりとした揺れのことです。短い周期の地震動に比べ、海の波のように遠くまで伝わる特性があり、地震動が終息した後も、高い建物の高層階(おおむね10階以上)では数分にわたって揺れが継続することがあり、家具類の転倒・落下・移動により大きな被害が発生することがあります。
東日本大震災後、東京都内で実施したアンケート調査によると、高層マンションでは家具の転倒などによる室内被害が高層階ほど多く発生していることが分かっています。
また、アンケート調査の結果、免震構造の建物でも家具類の移動等がみられたことから、「免震構造だから大丈夫」と思わずに、必ず家具転対策を行いましょう。
東京都内では、首都直下地震や南海トラフ地震の発生による被害が危惧されています。いつ起こるか分からない地震に備えて、今一度ご自宅の家具転対策の見直しをしましょう。
固有周期が1〜2秒から7〜8秒程度の揺れが生じる高層ビル内における、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度から4つの段階に区分した揺れの大きさの指標です。
さらに詳しい家具転対策については、東京消防庁ホームページに掲載中の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」をご覧ください。
家具転対策ホームページでは、家具転ハンドブック以外にも、家具転啓発プロモーションビデオや、過去の地震の調査資料なども公開していますので、ぜひ一度ご覧ください。
また、家具転対策の必要性や方法を知ってもらうため、アニメーションを用いた動画を新しく制作しました。若い方や普段防災に触れる機会が少ない人にも興味を持っていただけるような内容となっています。
YouTube東京消防庁公式チャンネルにて公開していますので、ぜひご覧ください。