年末となり自宅の大掃除を検討している方が多いかと思います。普段は動かさない家具・家電を動かす大掃除の機会に、「住宅用火災警報器の点検・交換」、「家具類の転倒・落下・移動防止対策」及び「トラッキング火災の防止」を実施しましょう。
住宅用火災警報器(以下「住警器」という。)は、煙や熱を感知して、警報音等で火災の発生を知らせてくれる機器です。住警器を設置することで火災を早期に発見し速やかな通報や消火・避難が可能となり、被害を防止・軽減することができます。
なお、令和2年中、住警器の作動により火災の被害軽減につながった奏功事例は224件ありました。
そして、設置した住警器は定期的に点検をしましょう。点検は、本体のボタンを押すか、付属のひもを引いて行います。正常な場合は、正常であることを知らせる音声や警報音が鳴ります。一般的に、点検の際の警報音等は自動で止まります。
また、設置後10年を経過した住警器は電子部品の劣化や電池切れなどにより火災を感知しなくなる恐れがあります。この機会に住警器の点検を行うとともに、設置から10年を経過している場合は本体を交換しましょう。
住警器にホコリ等の汚れが付くと火災を感知しにくくなります。汚れは乾いた布でふき取りましょう。台所に設置してある住警器で油汚れがひどいものは、家庭用中性洗剤を浸して十分絞った布で軽くふき取ってください。
◆居住者は仏壇のろうそくにマッチで点火し、マッチを廃棄した後、居室でテレビを見ていた。その後、仏間から住警器の鳴動音が聞こえたので、確認したところ、仏壇付近から炎が上がっているのを発見した。すぐに、台所へ行き、ボウルに水道水を入れ、初期消火を実施した。その後、119番通報した。
◆居住者は2階寝室で電気ストーブのスイッチを入れたまま就寝してしまい、掛け布団が電気ストーブに接触して火災になった。寝室に設置してある住警器の鳴動音で目が覚めると同時に、1階リビングにいた同居家族も連動式住警器の鳴動音で駆けつけることができた。浴室に掛け布団を運びシャワーで消火後、119番通報した。
◆居住者はタブレットを充電したまま就寝した。深夜に住警器の鳴動音で目が覚めると、充電中のタブレットから炎が上がっていることを発見した。すぐに、バケツに水道水を入れ、初期消火を実施した。その後、119番通報した。
◆居住者は鍋を火にかけたまま放置し、居室でテレビを見ていた。しばらくすると鍋から煙が上がり、住警器が鳴動した。鳴動音を聞いた隣人が、廊下に出たところ煙が充満していたことから、玄関ドアをノックし居住者に知らせた。居住者はすぐに火を止め、火災には至らなかった。
◆居住者がこんろの火を消したつもりで外出してしまったところ、鍋が空焚き状態となって煙が発生し、住警器が鳴動した。隣人の男性が住警器の鳴動音に気づき、119番通報を行った。到着した消防隊がこんろの火を止め、火災には至らなかった。
◆居住者は深夜に帰宅後、調理を開始したが、鍋を火にかけたまま寝てしまった。しばらくすると鍋から煙が上がり、住警器が鳴動した。鳴動音で目が覚めた居住者が、慌ててガスこんろの火を消したため、火災には至らなかった。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響により自宅で過ごす時間が増えた人も多いのではないでしょうか。ライフスタイルが変わり、リモートワークが定着することで、今後も自宅で過ごす時間が増えると考えられます。自宅で過ごす時間が増えるということは、地震発生時に自宅にいる可能性が高まると言えます。
今年の汚れを払い、新しい年を気持ちよく過ごすための大掃除に併せて、家具類の転倒・落下・移動防止対策(以下「家具転対策(かぐてんたいさく)」という。)を実施しましょう。
家具転対策とは、地震時に家具や家電が倒れることによるけが等を防ぐために、家具類を固定したり、落下防止したりすることです。
今年は、10月7日に千葉県北西部でM5.9の地震が発生し、東京都内で東日本大震災以来の最大震度5強の揺れを観測して、けが人や火災が発生しました。いつ起こるか分からない地震に備えて、自分自身や大切な人を守るためにも家具転対策は大切です。
地震の揺れにより、家具類が倒れて下敷きになったり、割れたガラスや破片が飛び散ったりして、けがをすることがあります。
また、近年発生した地震でけがをした要因を調べると、約30%〜50%が家具類の転倒・落下・移動によるものでした(図1)。
転倒・落下した家具などが電気ストーブなどの電源スイッチを押し、付近の燃えやすいものに着火するなどして火災が発生することがあります。
避難通路や出入口周辺に転倒・移動しやすい家具類を置くと、避難通路を塞いだり、引き出しが飛び出すことで、つまずいてけがをしたりと、避難の妨げになることがあります。
また、家屋の倒壊や火災が発生すると、大変危険です。
納戸やクローゼット、据え付け収納家具への集中収納により、努めて生活空間に家具を置かないようにしましょう(図2)。
また、棚などの家具に物を収納する場合は、重いものを下に収納し、重心を低くすることで倒れにくくしましょう(図3)。
避難通路や出入口周辺に転倒・移動しやすい家具類を置かないようにしましょう。倒れた家具類により、ドアが開かなくなったり、つまずいてけがをしたり、避難の妨げになることがあります。
また、家具類の位置や方向に注意することでけがの危険を減らせます(図4)。
それぞれの家具類の大きさや形に併せて、適した家具転対策器具を設置しましょう(図5)。対策器具の効果は、L型金具のようにネジやボルトで家具類と壁面を固定するタイプの効果が高くなっています(図6)。また、ポール式とストッパー式を併用することで、L型金具と同等の効果を得ることができます。
家具転対策の必要性や実施方法をまとめた『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』を東京消防庁のホームページに掲載していますので、ぜひご活用ください。
今年度、家具転対策を推進するための動画を制作しました。アニメーションを用いた動画となっており、若年層の方や普段防災に触れる機会が少ない人にも興味を持っていただけるような内容となっています。
動画では、主人公の家で、友人達が集まって誕生日会をしているときに地震が起き、集まった友人達が家具類の転倒や落下によりけがをします。家具転対策をしていなかった主人公に「家具転対策やっとけよ!」と叱責し、家具転対策の必要性と方法を教えるという内容になっています。
YouTube東京消防庁公式チャンネルや東京消防庁HPにて公開していますので、ぜひご覧ください。
令和2年中、東京消防庁管内では、延長コードの差込みプラグや電気機器の電源プラグのトラッキング現象による火災が21件発生(前年比9件減少)しています。
トラッキング現象による火災は、長期間コンセントに差し込まれているプラグ部分に埃や湿気が溜まることで発生し、発見が遅れると思わぬ被害に繋がる場合があります。
大掃除の機会にコンセントやプラグ周りなどを確認してみましょう。
コンセントに差し込んだプラグの差し刃間に付着した綿埃等が、湿気を帯びて微小なスパークの繰り返しにより差込みプラグの絶縁が破壊され、やがて差し刃間に電気回路が形成され出火する現象をいいます(図7・写真1)。
トラッキング現象による火災を防ぐため、差込みプラグは、使用時以外はコンセントから抜くようにしましょう。長期間差したままのプラグ等は、定期的な点検と乾いた布等で清掃し、もし異常がある場合は、使用するのをやめましょう。
また、大掃除中に「コードが家具などの下敷きや押しつけなどで傷ついていないか」、「コードを束ねたり、ねじれたまま使用していないか」も併せて確認すると電気火災の予防に繋がりますので、ぜひ実施しましょう。