冬は救急出場が増加する傾向があり、月別の救急出場件数をみると、1月の出場件数が最も多いことがわかります(図1)。
要因としては、インフルエンザ等の感染症の流行などが考えられます。また、この時期に増加する特有の事故として、積雪や路面凍結による転倒、餅を喉につまらせたことによる窒息事故などもあります。
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ等への感染、各種事故などには十分に気を付けてください。
救急車で搬送された方のうち、入院を必要としない軽症の割合は50%以上を占めています(図2)。
また、東京消防庁で実施した世論調査では、救急車を要請した理由として、「交通手段がなかった」、「救急車で病院に行った方が優先的に診てくれると思った※」など、緊急ではない理由も見受けられます。
※ 安心して適切な救急医療が受けられるように定められた「救急医療の東京ルール」の一つに、「トリアージの実施」というものがあり、救急車で搬送された方についても、症状の緊急性等に応じた診療の優先順位を、医療機関で判断しています。
東京消防庁では、119番通報で救急車の要請を受けると、対応可能な最も近くの救急車が出場します。救急車の数には限りがあるため、救急要請が集中・増加すると、その周辺地域の救急車は全て出場中となってしまいます。そして、更にその周辺地域で救急要請があったとき、近くの救急車は全て出場中であるため、遠くの救急車が出場することとなり、到着までの時間が長くなります。
救急車の到着が遅れるほど、命の危険が迫っている傷病者の助かる可能性が低下していきます。一刻も早く、病院に行く必要のある人のもとに、救急車が到着できるよう、救急車の適正な利用を心がけましょう。
どんなときに救急車を呼ぶことが救 急車の適正利用なのかと迷われる方も多いと思います。
救急車を呼ぶべき例や、「これは救急車でしょうか?」という例を挙げてみましたので参考にしてください(図3・図4)。
これらは例であり、全ての事故にあてはめられるわけではありませんが、もし、救急車を呼ぶかどうか迷ったときは、「#7119」東京消防庁救急相談センターや東京版救急受診ガイドをご利用ください。
「救急医療の東京ルール」におけるトリアージの一つとして、救急隊による「救急搬送トリアージ」を実施しています。これは救急隊が救急現場において、傷病者に緊急性が認められないと判断した場合に、同意を得て自己受診をお願いするものです。
救急隊が緊急性の高い傷病者に対して迅速かつ的確に対応していくため、ご理解とご協力をお願いします。
知ろう 使おう #7119 (作者 古川 康平さん 府中市在勤)
東京消防庁では、急な病気やけがで「今すぐ病院に行ったほうがいいのかな?」、「救急車を呼んだほうがいいのかな?」など迷った際の相談窓口として、東京消防庁救急相談センターを開設しております。
救急相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者等の職員)が、医療機関案内と救急相談に24時間・年中無休で対応しています。
「#7119」は携帯電話、PHS、プッシュ回線からご利用いただけます。
その他の電話は、23区は03(3212)2323、多摩地区は042(521)2323からご利用ください。
急な病気やケガをした際に、「今すぐ病院に行くべきか」、「救急車を呼ぶべきか」迷った時に自ら緊急性の判断ができる「東京版救急受診ガイド」を東京消防庁ホームページ上で提供しており、パソコン、スマートフォン、携帯電話から利用することができます。
「東京版救急受診ガイド」は、59の症状から該当する症状について、利用者自らが質問に答えることで、ご自身の症状の緊急性や受診科目、受診する時期などを確認できます。
なお、インターネット環境を持たない都民向けに冊子版も提供しています。
「東京版救急受診ガイド」をいつでも利用できるように、下記のQRコードを携帯電話またはスマートフォンで読み取り、登録しましょう。
スマートフォン・携帯電話やパソコンから東京消防庁ホームページにアクセスして『東京版救急受診ガイド』をご利用ください。
※リンクから受診可能な病院検索もできます。
※緊急性があると思われる場合は、ためらわず救急車(119番)をお呼びください。
都内で外国の方が急な病気やケガをした際に安全・安心を提供するツールとして、東京版救急受診ガイド(英語・ウェブ版)を東京消防庁ホームページで提供しています。
東京版救急受診ガイド(日本語・ウェブ版)と同様に、59の症状について、利用者自らが質問に答えることで、ご自身の症状の緊急性や受診科目、受診する時期などを確認できます。
東京版救急受診ガイド(英語・ウェブ版)パソコン・スマートフォン用URL
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kyuuimuka/en_guide/main/index.html
女優の「松井玲奈」さんが「#7119」東京消防庁救急相談センターについて紹介するプロモーションビデオを公開しました。若い世代をメインターゲットとしながら、幅広い世代にも伝わる映像となっています。
この動画は、東京消防庁ホームページやYouTube東京消防庁公式チャンネルなどで公開していますので、ぜひご覧ください。
東京消防庁管内1)では、毎年12月から1月にかけて餅など2)による窒息事故が発生しています。
年末年始には、餅などを食べる機会が増えるので、注意が必要です。
1)東京都のうち、稲城市、島しょ地区を除く地域
2)団子等も含みます。
過去5年間で餅などをのどに詰まらせて救急搬送された方は453人おり、約9割の方が65歳以上の高齢者です(図5)。
過去5年間を月別にみると、最も多いのは1月で164人、次いで12月が60人となっており、冬場に多くなっています(図6)。
過去5年間に救急搬送された人の年齢層(5歳単位)をみると、65歳以上から増加し、80歳代に最も多く発生していることが分かります(図7)。
過去5年間の餅などによる事故では、救急搬送人員の約7割が中等症以上と診断されています(図8)。
【凡例】 | |
---|---|
死 亡: | 初診時に死亡が確認されたもの |
重 篤: | 生命の危険が切迫しているもの |
重 症: | 生命の危険が強いと認められたもの |
中等症: | 生命の危険はないが入院を要するもの |
軽 症: | 入院を要しないもの |
事例1
訪問先で飲酒しながら餅を食べていたところ、呼吸が苦しいと訴え、その後倒れて意識を失った(60代・重篤)。
事例2
草餅(5cm程度)を食べていたところ、喉に詰まらせてしまい、倒れて意識を失った(90代・重篤)。
チョークサインを出しているとき、声を出せないとき、顔色が急に真っ青になったときなどは、食べ物などにより気道が塞がれていることが疑われます。そのようなときは大きな声で助けを呼び、119番通報とAEDの搬送を依頼し、直ちに気道異物除去を始めます。
窒息を起こし、呼吸ができなくなったことを他の人に知らせる世界共通のサイン。
ただちに心肺蘇生を開始してください。